2015-04-14

おでんを諦めてから、わかめを諦めるまで――春の18きっぷ旅 播州編(中)

(承前)


おでんのことは忘れることにして、新快速に乗車、姫路から約25分で明石に着く。小糠雨が降っているが、傘なしでいけそうな感じ。姫路へ向かう途中でちらっと見えた城跡の公園以外、観光する場所といって、有名な魚の棚(「うおんたな」と発音する)商店街くらいしか知らないので、まずは観光案内所で地図などをもらう。この時点でまだ昼前なので、観光を先にしようではないか。


駅前に出れば、コレ。


明石鯛ですね。名物です。コレ、かなり高い位置にあって、高架になっているホームからも見えるので、明石駅は通過したことしかないけど、ずっと気になっていたのだ。まあ、わたしとしては、たこのほうが好みなのだけど、それはおくとしても、なんで逆さなのだろう。躍動感?


まずは公園に向かう。なんか像が立っているのが見える。


なんだろう。後姿を見るに、どうやら人体の最上部に繁茂する、80%以上がたんぱく質から成る物質をほぼ欠いている人物の像であるらしい。「明石の入道像」だったら盛り上がるよな(なにが?)、などと思いつつ近づいてみる。というか公園入り口に立っているので近づかざるをえないわけだが。


明石の入道像ではなく、大洋漁業株式会社の創業者であった。ということは、この方のおかげで、わたしはさば缶(常備してます)をおいしくいただくことができるのだ。これはこれは、いつもありがとうございます。

櫓のある広場に登る坂道にて。ここも桜はしまいかけで、かなり散っている。



櫓には入って見学することができるらしい。

頂上の公園に到着すると、株の話で盛り上がっている10人ほどのおじさまたちの宴がたけなわであった。今が平日の真昼間であるということを忘れそうになる。

そして櫓は


 雨天(小雨を含む)公開中止であった。


公園をぐるっと歩く。


激しい領地争いに両者飽き果てて共生している感。真ん中の木の幹には誰かの名前が深く刻まれている。シュウヘイ、わたしはお前を許さん。本人が彫ったかどうかは知らんが。

来たときとは違う道を下りてみる。


なんの屋上なのかよくわからないが、行ってみるかな。ちょうど反対側から登ってきたおじさま二人組の後について行く。


お、いい眺め。おじさまいわく、「綺麗やろ。ここからの眺めが一番ええんや。知らん人多いけどな」

この辺で雨が本降りになってきたし、時間も正午を過ぎ、腹も減ってきたので駅の南側に出て、魚の棚商店街へ向かう。


なに???



こういう器具の専門店??

通りの角まで来て、やっと全貌が見えた。


それにしても「ひ」と「尿器」の間が離れすぎではないだろうか。それに場合によっては縦長の看板で分断される恐れもあるように見えるのだが大丈夫か。そして「ひ-尿器間問題」に直接関係はないものの、「個室の宝石箱」というのも、どんなものなのかちょっと気になりはするのだが、深く追求はしないでおこう。


くだらないことばかり考えているうちに魚の棚商店街に着いたが、まだまだ昼時なのでどの店も混雑しているだろうと思い、食事する店を探しがてら、いちどここを通り抜けて銀座通りへ出て、それから海のほうに行ってみることにした。鮮魚店の店先に並べられた、見るからに新鮮なイカや小魚が目にうれしい。焼き穴子の店に心惹かれるものを感じる。明石焼きもいいけど、穴子も捨てがたい……と心たのしく迷いに迷う。迷っているうちに銀座通りに出た。ここを南下して港のほうへ。

おお、いい感じの看板。


そうだった、明石焼きは元来「玉子焼き」というのだった。この店、よさそうだったのだけど、残念ながら定休日。

橋の上から見えた、ちょっといい景色。


港のほうに行ってみたが、なにやら工事しててあまり楽しくない。一度乗ってみたかった「たこフェリー」(明石淡路フェリー)もいまは営業してないしな。しかたない、魚の棚の方へ戻ろうと銀座通りを歩いていると、選挙期間中のことで、選挙カーがやかましい。まわりに人がいない状況で、候補者にめっちゃ手を振られたが、明石市民でも兵庫県民でもないのでどういう態度をとっていいのやらわからない。まあ、地元で手を振られたとしても、どういう態度もとりはしないのであるが。


ふたたび魚の棚商店街到着。ああ、新鮮な魚介類よ! 干物の店の干しだこよ! 明石焼きの店先に何匹も吊り下げられた蒸しだこよ! 購買欲でどうにかなりそうである。ピカピカの小魚がトロ箱いっぱいで300円! 選んでいるお客さんに、魚屋のおっちゃんがパシッとはたいてキュッと縮む様子を見せているハリイカなんか、ああ、もうたまらん。観光で来てるんだ、近所じゃないんだ、冷静になれ、買っちゃダメだ買っちゃダメだ買っちゃダメだ、と呪文のようにつぶやく。

冷静になって、とりあえずは昼飯だ、と先ほど心惹かれた焼き穴子の店に近寄ったら、扉にはすでに「完売しました」の貼り紙。無念。先に港のほうになど行くのではなかった。だが案ずることはない、わたしにはまだ明石焼き(玉子焼き)があるのだ。ということで店を探す。探すまでもなく、商店街の中だけでも何軒もあった。ま、どこに入ってもハズレはないでしょ、と思いながらも、せっかく来たのだからと店ごとの特徴を探ろうとする。が、よくわからない。それならたこ飯と明石焼きを一度に食べられる店に入ってしまえホトトギス、と乱暴な気持ちで明石焼き専門店ではなく、食堂っぽい店に。「うまいもんや」と大きく染め抜かれた緑ののれんの「かねひで」さん。ちなみにこちらも「玉子焼」の看板が掲げてあった。メニューは通りのよい「明石焼き」表記だったけど。注文した明石焼きセットは、明石焼き15個と、たこ飯に漬物という、炭水化物&たこの大盤振舞いセット。これ850円。待ってる間に地図でも見ようか、と駅でもらってきた地図をかばんから出した瞬間に「お待たせしました~」の声。いや、ぜんぜん待ってませんが。まあ、ファストフードだから、これでいいのか。地図をふたたびかばんにしまって、いただきます。薬味として三つ葉と葱の刻んだものがついている。あっつあつの明石焼きを、まずはひとつ、薬味を入れずにお出汁につけて食べる。あっつあつである。あっというまに硬口蓋の皮がべろべろ。だがうまい。つぎに三つ葉だけ、そのあと葱を加えて、と三種の味を楽しんだ。三つ葉がいいな。食卓にはソースも置かれていたが、それは試さず。たこ飯はわりとしっかりした味だった。ごちそうさまでした。


しかしけっこう腹いっぱいになってしまった。明石焼きの食べ比べなんかしてみたかったのだけど、ちょっとこれでは無理そう。セットなんて食べなきゃいいのに、って思ったでしょう、そこのあなた。わたしもそう思いました。というわけで腹を減らすべく商店街を歩く。歩いていると購買欲がまたもやうずうずと。生の魚介は無理だけど、干物ならいいだろう。そうだそうだ、干物買おう。大きい干しだこは数千円もするので買えないけど、小さいみりん干しのたこを買って帰ろう。店のおばちゃんに相談して、たこ飯用のと、あぶって食べる用のたこを選んでもらう。「ご飯用のは厚いのがいいし、あぶるのは薄いほうが食べやすいから」と、たくさんある中から選んでくれた。2匹で500円。


あとはわかめでも買うかな、と考えていると、なにやら商店街が騒然としてきた。手を振りながらこちらへ歩いてくるスーツ姿のおばさまに、人々が群がり握手を求めている。というよりおばさまのほうから人々に近づいて手を差し出している。なんだあの人、と思ってよく見たら、片山さつき氏だった。選挙の応援で来てんだな。あ、わかめの店の人もそっちに行ってしまった。すごい人気だ。それはともかくとして、あの、わかめが買えないのですが。


(続く)

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