2019-02-10

日々雑記 2019 Feb. #1

1日(金)




ラーメン(明星チャルメラ醤油味)。
煮たまご、メンマ、九条ねぎをトッピング。インスタントとはいえ、いかにもラーメンというラーメンが食べたかったのだ。煮玉子はタレ(煮切り味醂と醤油を水で割ったの)に半熟の茹でたまごを漬け込んだのもうまいけど、煮しめて白身が締まったのもオツなもの。しかしなにか足りない気がする、と思ったらもやしを忘れている。

夕方、実家から餅やらなにやらが届く。しかし何故いま餅なのか。まさか誕プレ? なわけないな。

晩は餅を焼いて砂糖醤油で。


2日(土)




全粒粉クロワッサン、コーヒー。
例のシリーズのクロワッサンだけど、これは焼いた方がよかったかもしれない。




がんもどきの焼いたの、ノビルの醤油漬け、大根菜めし、打ち豆と大根とにんじんの味噌汁。
がんもどきは生姜醤油でと思ったが、生姜が切れていたのでカラシを添えた。打ち豆の味噌汁には酒粕入り。某呟き処で教えていただいたもの。とても美味しい。

おやつ


雑煮。
具なしなので、雑煮というより白味噌汁に浸かった茹で餅。冷凍庫が2㎏のコーヒー豆でいっぱいなので、行き場のない餅をせっせと消費しないといけないのでな。

夕方買いものに行き、立派な塩いわしがお安かったので買った。行事食用として売っていたわけだが、行事食として食べるつもりで買ったわけではない。行事食に見えるだろうが。

晩酌


風呂吹き大根に山椒味噌、ヱビス。
山椒味噌は、実山椒が出るころに母がつくって送ってくれるもの。そのままごはんに乗せたりきゅうりにつけたりして食べていたが、お湯でのばすとタレになることがわかったので、今後積極的に使っていきたい。


3日(日)




たぬきうどん。
片栗粉の量が適当すぎて毎回濃度が違う。今日は薄い。そしておろし生姜を忘れたので、これをたぬきうどんといっていいのかどうか甚だ疑問である。とろみも薄ければ生姜もなく、だまって出したらこれをたぬきうどんと思う人はいまい。家庭料理においてはオリジナルと異なるものができあがったり、なにか入れ忘れたりすることは珍しくなかろうが、わたしの場合、その料理のアイデンティティにかかわるものを忘れる傾向があって、前にも書いた気がするが、ペペロンチーノに唐辛子を忘れるなど日常茶飯事だ。(なにを堂々と)




焼きいわしに大根おろし、大根皮の柚子茶酢和え、白ごはん、大根の味噌汁。
いわし美味い。これくらい大きいのを、毎日お安く売ってくれていたらいいのに。


4日(月)




おろし餅。
茹で餅に大根おろしと醤油。餅の食べ方としては、これがいちばん好きだ。むかし母の実家の餅つきの手伝い(餅を丸める程度)に行って、つきたての餅をこうして食べるのは最高だった。

夜、買いものに行く。太巻きを安く売ってないかなと思ったが、世の中そう甘くはない。というか、ちゃんと売り切れる量にしている近所のスーパーはエラいと思う。いつでも売っているきゅうり巻きとたまご巻きを買い、晩めしはこれにする。それとは別に


こういうものを買ってしまった。恵方が書いてある。これは明日の朝食にすることにして、晩は湯豆腐。


5日(火)

朝はロールちゃんとコーヒー、と思ったが、ロールちゃんより消費期限が先のうどん玉があったので


刻みきつねうどん。
今日のお揚げはパリっと焼いた。

今日はウチ仕事なのだけど、朝起きたときから頭の中で Talking Heads の "Road to Nowhere" が鳴っていて、やる気がでない。仕事中くらい止まってほしい。




炒飯。
たまご、一昨日のごはん、そろそろ怪しい大根葉としらすのふりかけ、煎りごま、一味唐辛子。

晩は昨夜に続いて湯豆腐。


6日(水)

昨夜はほとんど眠れず、レイラ・スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』(松本百合子 訳 集英社文庫)を読み始め、100ページほど読んだ。冒頭からしてしんどいのはわかっていたけれども、使用人との間に壁はないかのようにふるまいながら、雇用者は、使用人がその壁をないかのようにふるまうことには嫌悪感をもち、その嫌悪感が恥ずべきものであるという感覚はあるために、「相手のためを思って」拒絶することで自分を免罪し慰撫するというあたりのやらしーい機微に、どえらく疲れた。最後まで読めるかな、これ。

夜明け前に少し眠ったときに、歌舞伎ふうの夢を見た。内容はほとんど覚えてないけど、一度、なにか重要な道具が壊れたために中止した仇討ちの計画を練り直し、出かけるというもの。そこでのわたしの役割はよく覚えていないが、仇討ちする人に協力する老夫婦の関係者程度のオブザーバーだったような、もうちょっと仇討ち計画にかかわっていたような。




味付け海苔、納豆、白ごはん、お揚げの味噌汁。
眠れないと時間があるので、ごはんが炊けて、まあまあちゃんとした朝食が摂れる。なにか間違っている気がする。

晩は湯豆腐(またしても)。


7日(木)

早朝、北海道に行くために空港に向かう途中で、M78星雲の方が二人、霧の中に立っておられるのを見て写真を撮る。おおすごいでかい動いてる動いてる。薄暗いのでちゃんと撮れているかわからず、念のため数回シャッターを切る。わたしは北海道に行くというのに、着ているのがTシャツとショートパンツだ。2月なのに。これまずいですかねえ、と問うと、せめて上着を着ないと、と運転していた友人がうちに引き返してくれる。ショートパンツをジーンズに履き替え、マウンテンパーカーを羽織り、友人の運転するバンに乗り込みつつ、明日はまた別の人と北海道に行くのだが、今日中に帰って来れるだろうか、と考える。そんな夢を見た。




ロールちゃん、コーヒー。
丸かぶりした。わたしが小さいころ、節分の巻きずし丸かぶりが我が家にも伝播した(2年くらいで廃れた)んだけど、当時「恵方巻」っていいかた、なかったと思うんよね。「丸かぶり寿司」っていってたと思う。

仕事を終え、昼食どうしようかなと考えつつ、三条通を東へ。そういえば、こっち方面はほとんど歩いたことがない。と


ほう。そういうなら食べてみようではないか。しかし店先の黒板の


「膝°"(ピザ)」を見て一抹の不安を覚える。先の看板の「切なすぎるほど」にひっかかりを覚えたが、これはその「危ないぞ」感をじゅうぶん裏付けるものではないだろうか。それはそれとして、「膝」は「ひさ」ではないのだから「"」は不要なのではないか。しかし店主の言語感覚と味覚及び技術に相関関係があるか否かは未知の問題であり、また塩ぱんは好物なので、ひとつ買っていくとしよう。

てことで、昼食は


フレンチアップルパイ、塩ぱん、コーヒー。
膝°はなかったが、肺°は売っていたのだ。いうだけあって、美味しい塩ぱんであった。京都中のパン屋を行脚して塩ぱんを制覇したわけではないので、一番うまいかどうかはわたしの知るところではないけれども。そして切なくはならなかった(※個人の感想です)。看板はともかくとしてパンは美味しかったので、また寄ってみようと思う。




餅茶漬け。
ラスト3個の餅を焼いて、梅茶漬けの素で。途中さすがに飽きたので中断したが、これでカビる前に食べきることができた。やれやれ。

夜、のどが痛くなってきて、咳が出ているのだが。やめて。


8日(金)

のどの不調はひと晩寝たらおさまったっぽい。




トースト、コーヒー。

ぼちぼちアレをナニせねばならぬので、うち仕事だがいつもより神経を使う。




天丼、白菜漬け、茎みょうがの味噌汁、ぽんかん。
天丼は、昨夜買った天ぷら盛り合わせをあたため、炊いたごはんに乗せて、めんつゆをかけた。らくちん。味噌汁の茎みょうがは刻んで冷凍しておいたもの。

夜、買いものに行ったら、昨日130円で買ったしいたけが98円で売っていた。某呟き処で「こんなときみんなどうする? なんか呪う?」ときいてみたところ、ほとんどの人はなにも呪わず、98円のも買い、たくさん食べられてラッキー! なことがわかった。平和だ。ご意見のなかに「名前をつけて愛でるとよいのでは」というものがあり、その発想はなかったのでやってみようと思う。5本入りだったので、それぞれネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスと名づけた。130円のしいたけにふさわしく、高貴な名だ。

残りごはんで粥を炊き、梅茶漬けの素を振りこんで食べた。


9日(土)

朝は薄めに淹れた紅茶のみ。




鍋焼きうどん。
ハドリアヌス(しいたけ)を使用。


残された賢帝たちの運命やいかに。

おやつ


フルーツケーキ、コーヒー。
ケーキはホシフルーツのミニョン・ド・クグロフ(ココナッツ&キャラメル)。紅茶のほうが合う味だった。

寒くとも季節は春なので、タマシダとシノブの古い葉を切ってやり、水をやった。

夜、近所のスーパーで半額になっている惣菜を各種仕入れてきた。これらをアテにビール飲んで寝る。


10日(日)




ほうれんそうととうもろこしとチーズのホットサンド、紅茶。




塩焼きそば。
具はかにかま、にんじん、キャベツ、九条ねぎ、しいたけ(トラヤヌス、アントニヌス・ピウス)。朝のとうもろこしとチーズの残りをトッピングしようと思っていたことに、食べ始めてから気がついた。

おやつ


人形焼(栗)、ほうじ茶。
栗、なんならひと口でいけるサイズも含めて、かわいい。




辛味噌鍋。
ネルウァとマルクス・アウレリウスの最期である。次回「セウェルス朝のあけぼの」をお楽しみに!(やりません)

2019-01-31

日々雑記 2019 Jan. #3

21日(月)




クレソンスープ、トースト。

晩は買ってきたきゅうり巻き(好物)と粕汁の残り。


22日(火)




トースト、コーヒー。




魚肉ソーセージとキャベツの焼きそば。


23日(水)




素うどん。

文博で成瀬己喜男監督『めし』を観る。学生のころに観たはずだが、冒頭、原節子が「外米が少しにおうかしら」と炊いたごはんのにおいを嗅ぐ場面しか覚えていなかった。「川端康成監修」さえ覚えていなかったほどだ。観ているうちに、ああ、ここ覚えがあるな、という場面がいくつか出てきはしたけれども、ほとんど覚えてなかったので実質はじめて観る映画という。しかし職人技の光る凄い映画だった。昔のわたしはなにを見ていたのか。「外米が~」のあと、めしをよそった茶碗の受け渡しひとつで、見事に夫婦の問題を暗示しているではないか。猫の使い方も計算されつくしている。実家に帰った三千代(原節子)のカーディガンが毛玉だらけなのがとてもいい。初之輔(上原謙)の「芳太郎くん(向かいのうちの息子)、就職決まったよ」という、なんてことない台詞が、さりげなくなめらかにハッピーエンディングへの道筋をつけているではないか。憎いほど巧い。杉村春子は問答無用で最高。関係ないが、悪役ではない進藤英太郎をはじめて見た気がする。

帰宅して、晩めし


お揚げと大根の鍋。
七色唐辛子をふって食べる。大根が甘い。


24日(木)




にんにくのスープ。
食べると体の内側からあったかくなってくる。なるほど食べものは燃料なのだなと思う。

今日が期限の回数券で近江八幡へ。ウチを出るのが1分遅れたため地下鉄に乗り遅れ、JRで20分の待ち時間が発生、当然バスにも間に合わずと、雪だるま式に遅れが拡大していくわけだがしかたない。それもあり、雪がちらついていることもありで、長命寺は今回は見送ることにした。八幡堀辺りまでは、駅から徒歩30分。この前素通りした市立資料館(ヴォーリズ建築)を写真におさめたのち、初雪食堂さんで昼食。


テンチュー(天ぷら中華そば)。

このあとは、クラブハリエ日牟禮館のカフェ特別室として利用されているヴォーリズ建築を見に行きがてら、前回見て回った建物をもういちど見たり、気になっていた場所をいくつか回って、駅に戻る。せっかくなので安土まで足を延ばし、旧伊庭家住宅も見てきた。よく歩いた。

紅茶を淹れて、クラブハリエで買ったドーナツを食べ、日付が変わる前にコテンと寝てしまう。


25日(金)




きつねうどん。
たまには甘ぎつねもやるけど、どっちかというとお揚げは甘く煮ないのが好み。焼いて入れたりもするが、お出汁でちょっと炊いただけのが多い。




鍋。

夜、昨日の近江八幡行を上げる。( → 「冬のふらふら旅 2018-19 ― 近江八幡を歩き倒す 4 (ヴォーリズ建築編 2 )」


26日(土)

この冬最大の寒波が来ているらしい。ベランダから見える山が真っ白だ。




チーズトースト、紅茶。




炒飯、インスタントもずくスープ。
冷凍麦飯、たまご、魚肉ソーセージ、にんにく、玉ねぎ、にんじん、ピーマン、煎りごまと、備蓄食材のみを使用。最初に魚肉ソーセージを多めの油で揚げるようにしたら、歯ごたえがよくなってよかった。油はねがすごいけど。

午後、知らず知らずのうちにこたつで寝ていた。昼食を食べたらあったかくなってこたつの電源を切っていたので、寒くて目が覚めたが危うく自室で遭難するところではなかったか。ないか。起きておでんを仕込んだ。

大雪警報が出ている。


夜、近江八幡記事最終回を上げる。( → 「冬のふらふら旅 2018-19 ― 近江八幡を歩き倒す 5 (安土編)」

寝る前に、おでんに大根を入れ忘れたことに気づく。まあ大鍋で数日分あるのだから、明日でいい。


27日(日)

雪が少し積もっているが、晴れている。朝食前に、おでんに入れる大根の下茹でを開始。




黒糖バタートースト、コーヒー。
いつも焦げたのやらなんやらわからない黒糖トーストであるが、今回のはちょっと苦い方に振れている。そう、ありていにいって、少し焦げた。

昼前までに雪は溶けた。煮えた大根を温めたおでん鍋に投入。




おでん定食(大根なし)。
大根はまだ味がしみてないので見送り。やっぱり大根なしではもうひとつぱっとしない。

晩はおでんとビール。大根うまい。

夜、昨年末の旅の記事を上げる。( → 「鯛、庭、そして古書 ― 冬の18きっぷ旅 2018-19 (1)」


28日(月)

おたまをラケットがわりにテニスをする夢を見た。ボールは軟式の。なぜか関係ない人が周りにたくさんいるので、うまくサーブできなくて焦った。




砂糖チーズトースト、コーヒー。
食パンにシュレッドチーズと砂糖を乗せて魚焼きグリルで焼き、裏側は網で焼いた(オーブントースターがあればこんな苦労はしない)。これは甘じょっぱくて美味い。マヨネーズはダメだったけど、たぶんあれは酸味が強すぎたのだな。

晩はおでん。


29日(火)

昨日と同じ夢を見た。おたまでテニス。なんなんだ。




素トースト、紅茶。

晩はラストおでん。

夜、橋本治さんの訃報に接する。小説で好きなのは『つばめの来る日』だったけど、そういえば最初に読んだのは小説ではなく評論だった。『革命的半ズボン主義宣言』だっただろうか。誰かから借りて読んだ。大雑把にいうと「日本人男性はなぜ背広を着るのか」について一冊まるまる費やして語りつつ、理不尽には屈せず、しかし軽やかに対峙しようぜと主張している本(大雑把すぎるか)なのだが、この人は一貫して「自分で考えろ、自力で立て」と言い続けていたのだな。自分で考え、自力で立つことは、なにしろとてもめんどくさいことで、ほとんど誰もやりたがらないから、彼が「こんなふうにやるんだよ」とやってみせて、激励してくれていたのだなと思う。「貧乏は正しい!」シリーズはひとにも薦めた。たくさん読んでいたわけではないけど、この知性が失われてしまったことが残念でならない。ここに挙げた著書がすべて新刊書店では入手できないことも、残念だ。


30日(水)




クロワッサン、コーヒー。
「クロワッサン」という商品名で、だけどいわゆるクロワッサンではなく、ふかふかのロールパン。三日月形なので、クロワッサンでそれはいいのだろうけど、うーん、いいのだろうかと少しだけ思ってしまう。軽くて美味しいパンではある。




焼きそば。
具は魚肉ソーセージ、玉ねぎ、にんにく、にんじん、ピーマン、キャベツ、しいたけ。

晩、板わさでビール飲んでて鼻血出した。粘膜弱ってんな。


31日(木)

朝は黒糖クロワッサンと紅茶。写真はうっかり削除してしまったが、昨日のクロワッサンのシリーズ。焼いてもあまり味わいがかわらないことがわかったので、今朝のは焼かなかった。

午後はやく帰宅、出先で買ってきた焼きそばパンを急いで食べ、あらためて外出。本日期限切れになる映画の招待券があるのだ。

すでに開場していた『ナチス第三の男』に滑り込み。ローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』の映画化ということで、ある意味で期待していたんだけど、まああれができないのはわかるので、それはいいとして、普通に映画として見ても、なんかこう、ハイドリッヒにも寄れず、暗殺実行者クビシュとガブチークにも寄りきれず、どっちつかずの薄っぺらい印象。映像は美麗だったけどね。あとこれは日本側の広報がいけないのだと思うのだけど、キャッチコピーがよろしくない。「なぜヒトラーでもヒムラーでもなく、彼だったのか?」ってあんだけデカデカと書いといて、そのなぜかがサッパリわからなかったんですけど。ダメでしょう、これは。ちゃんと映画見てこのコピー書いたんかオマエは、と思ってしまいましたね、ええ、オマエって、誰かしらんけど。

なんかこれで帰るのが腹立たしかったので、同じ館で『未来を乗り換えた男』も観てしまった。これも邦題がちょっとどうかなという感じで、原題の Transit のままのほうがよろしいのでは、と思いつつ観たのだけど、これは佳作だった。1940年代はじめのマルセイユが舞台の物語を、現代に置き換えるのでなく、現代の装置を用いて語ってみせることで、その状況がいかに異常であるかを際立たせているように思われた。感傷的なところが一切ない描写が恐ろしい。そして、まさか最後にあの曲がかかるとは。

そして、間に合いそうだったので文博に移動して、『女が階段を上る時』も観てきてしまった。これは一度観ているが、やっぱり素晴らしかったな。しかしさすがに腹減った。

2019-01-27

鯛、庭、そして古書 ― 冬の18きっぷ旅 2018-19 (1)

この冬最大といわれる寒波が襲来した週末、うっかり居眠りして自室で遭難しかかった麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。「寝るなら布団で」、肝に銘じてまいりましょう。


年の瀬も押し詰まってきた某日の朝、前の日に買ったクラブハリエのあんぱんを食べる。消費期限は「当日中」だったが、まあ死にはしないだろう。まだ暗いうちに家を出て、西へ向かう。

海を渡って


うどん県へ。


駅舎がにっこり笑っている。はじめて見たときは「なんだおまえは」と思ったが、もう慣れた。

ちょうどお昼時である。今日はうどん旅ではないけれども、やはりうどんをいただきたく存じ、今まで二度訪ねようとして二度とも、覚えてはいないがなんらかの理由でそこまで行くことさえできなかったお店に向かって歩きはじめる。こんどこそは。

車がないとどうにもならないような地域の、とくに車通りが多い道路が往々にしてそうであるような、歩行者の存在をまったく考えに入れずに設計したんじゃないの、ここ? という所を歩いていて命の危険を感じたため、信号のある場所まで引き返して反対側に渡るなどしながら歩くこと約10分、やっと店までたどりついた本日、ああ、その店は定休日であった。悲願かなわず。ていうか調べとけよという話である。毎度のことだけれども。

うどんは食べたかったが、ともかく腹が減って別のうどん屋へ行こうという気力がなく、来る途中で「あそこもよさそう」と目をつけていた 北浜えびす海鮮食堂 さんへ。思ったより広い店内には、港で働いている感じのお客さんが多い。厨房近くのレジあたりにメニューの看板があるので、そこで注文して、セルフでコップに水を入れて席に着く。


窓の外には漁船が停泊している。ナイス。窓際の席にすればよかったかなーなどと考えていると、来ました


地たこ天ぷら定食 850円也。
大ぶりに切られたぷりぷりのたこの天ぷらは、食べ応えじゅうぶん。さすが漁協経営のお店。アラ汁もうまい。さつまいもとれんこんの後ろにちらりと見えているオレンジ色はにんじんの天ぷら。にんじんを単独で天ぷらにしたものって食べたことがなくて、最初はなんだかわからなかった。

腹を満たし、大満足で、ここからすぐの玉藻公園(高松城址)へ向かう。東門が近かったのだが、よくわかっていなかったのでぐるっとまわって西門から入ってしまった。入るとすぐにですね


鯛にエサをやれるんですよ皆さん。それはやるしかないでしょう(って、もう城とかほとんどどうでもよくなっているわたくし)。


人の気配を察知したか、鯛がしずかに集まってきている。


100円でエサを買い、勇んで階段へ……柵に鍵がかかっている。えー、これ下りられないってこと? ここから投げるしかないん? と思ったが、柵に蓋つきの木の箱が取り付けられているのに気がついた。開けてみる。


これから竹筒を通して餌をやるわけか。


……遠いなあ、鯛まで。間近でエサ食べるの見たかったよ。まあ仕方ない。数粒落としてみる。

にわかに色めき立つ鯛!


駆け寄るハト!


しかし竹筒を通して落とされるエサはすべて海へ!


ちょっと影が鳩サブレーっぽいぞ君ハハハハハ!……えーと。それで。

楽しかった……のか?

考えないほうがいいことは考えるのをやめ、園内散策に気持ちを切り替えよう、と披雲閣庭園へ。

披雲閣は藩主の仕事場兼住居であった建物で、現在建っているのは、維新後老朽化で取り壊されたのを、大正初期に松平頼寿が別邸として再建したものだそうで、国の重要文化財となっている。

のではあるけれども、帰ってから写真を整理してみると、建物の写真も庭の写真もほとんど撮ってないことがわかった。見つかったのは


ど根性松の写真が1枚。いや、散策はとても楽しかったのですよ。建物もよかった。なんで撮ってないんだか自分でもよくわからない。鯛の写真はあんなに撮ったのに。

このあと陳列館の展示を見る。なぜかひこにゃんが展示されていたので吃驚。高松城は彦根城と「姉妹城」なのだそうだ。姉妹城という言葉ははじめて聞いたが、調べたらわりとあった。しかし姉妹でいいのだろうか。「姉妹都市」は米語で "sister cities" というのだけど、これを提唱したのがアイゼンハウアーだという話があって、だとすれば、国や町は英語では女性扱いなので納得できる。しかし "castle" はどうなんだろ。日本語の「城」に近い語感のフランス語の "château" は男性だけどドイツ語の "schloss" は中性だったりするし、さらにいえば同じものを指す名詞の性が言語によって違ったりするのでややこしい。ま、なんでもええか。ちなみに英語で "sister castles" という表現は、わたしは見たことがない。

桜の馬場の水飲みは


なかなかに異なデザイン(市による公園の整備計画を見たら、これ、どうも撤去されそうな気配)。この近くには与謝野晶子の歌が刻まれたモニュメント(ライオンズクラブが寄贈したやつね)があって、中国人観光客の方が熱心に見ておられたのが印象に残っている。日本文学に関心のある方だったのだろうか。

ここから本丸跡は距離的には近いが、橋が一か所にしか架かっていないので、結局来た道を戻ることになる。水門のところを通りかかると、おそらく出張で来たのであろうスーツ姿のサラリーマン二人組が、鯛にエサをやっている。うんうん、やりたいよね。鞘橋を渡って、天守跡の展望デッキより海をのぞむ


工事車両なども見えたりなんかして……しかし、堀の水が海水というのははじめて見た気がする。鯉じゃなくて鯛が泳いでる堀。


高松駅に戻って、今回の旅のメインである次の目的地へ向かおう。徳島方面行の電車(2両編成)に乗り、二駅めで下車、徒歩3分で


あこがれの栗林公園。香川には何度も18きっぷで来ているのだけど、毎度毎度うどん目的なので、公園まで手が回らなかったのだった。見るよー。

芙蓉沼


蓮の枯れた風情もよいものだけど、これは花期は見事だろうな。

屏風松



反対側から見ると、こう


すごいなあ。

見返り獅子


なるほど。

フランス幼児がふたり、転げるように走り回っている。ご両親は芝生に腰を下ろし、楽し気に語らっている。ミシュランガイドを見て来られたのかな。ここ三つ星なんだって。

古理兵衛九重塔


ちょっと調べてみたけど、脇の看板に書かれている「松平初代藩主頼重公の「お庭焼」として正保4(1647)年に京都から招いた紀太理兵衛重利(きたりへいしげとし)が焼いた九重塔である」以外の情報が、ネット上にもほとんどない。

富士山をかたどって築かれた飛来峰より南湖をのぞむ


なんでしょうか、この絶景は。最高でしょうか。

湖の向こうの左奥、紫雲山を背にちらっと見えている建物が掬月亭、あの橋が偃月橋(えんげつきょう)。弓張月が湖面に影を映す姿に似ていることから名づけられたそう。その向こうにある丸っこい島が杜鵑嶼(とけんしょ)。杜鵑はホトトギス、ホトトギスの鳴く頃に咲く花=杜鵑花はサツキ、てことで杜鵑嶼はサツキ島ということですね。当然植えられているのはサツキツツジ。


「恋つつじ」ですってよ。こういうの、いつからあるんだろう、と思って調べてみたところ、無理にこの形にしたのではなく、剪定を繰り返すうちに偶然こうなったとのことで、「客寄せか」とつい舌打ちしてしまったどす黒い心を洗い清めんがため、今後一層、美しいものを積極的に摂取していくことを誓います。

梅林に、1本だけ花をつけている梅の木



あれ、ここ通ったはずなのに、気づかなかったってどういうこと? と思ったら反対側が屏風松で、松スゲースゲーで梅林の方をまったく見ていなかったのだった。たぶんこんな感じで、見ていないところが多々あるのではないだろうか。

しかしいいですよ、ここ。住みたい。住むのは無理だけど、たびたび来たい。近くだったら絶対年間パスポート(一人用 2,570円、三人用 5,140円)買うな。そうそう、後で知ったのだけど、玉藻公園のチケットを見せると入園料が割引になったらしい。これから行かれる方は、ぜひ。


2両の電車に乗って、高松駅へ。このあとはとくにしたいこともないので、街中を歩いてみようと思う。いつだったか、とあるうどん屋さんを目指して歩いてたら「菊池寛通り」という道に出くわしたんで、そっちの方に行ってみるかな、と歩き出して、すぐ。

む。


リバー書房さんという古書店。ここは、間違いない。なぜかはよくわからぬが、わたしの嗅覚が間違いないと告げている。中に入る。奥行きがそうとうあって、かなり広い。床からは本が積みあがっている。棚以外の場所に未整理の本が積まれている店はよくあるが、ここは少し違う。どちらかというと、散乱しているといった方が正しい印象。通路にはなんかの本の帯のきれっぱしみたいなものが落ちていたりして。ただし嫌な感じはなぜかしない(感覚は人それぞれだろうとは思うが)。棚の本はきちんと分類・整理されていて、品ぞろえはかなりよく、とくに文学、美術関係の本に良書が多い。いいですね。好きな本屋だ。

棚をゆっくり見ていると、奥からず……ずず……という音が。うどんだ。おっちゃんがうどんをたぐっているのだ。おお、地元民がうどんを食べている、となぜか盛り上がるわたくし。「それ、どこのおうどんですか」と聞きたい気持ちを辛うじて抑える。うどん県にきてうどんを食べずに帰るというのもまあいいけど、やっぱり食べたいよねえ。どっかで食べて帰ろう。それはさておくとして。

入口近くからだんだん奥に向かって見ていくわけだが、散らかり具合がだんだん酷くなっていく……棚ばかり見ていると確実に本を踏む。なんだろう、仕入れに整理が追いつかないのだろうか。おっちゃんひとりでやっておられるのだろうなあ。おっちゃんが座っている帳場のあたりが混沌の頂点で、どこもかしこも本だらけ。体のバランスを崩しそうになりながら反対側に折り返し、足元に気をつけながら棚を見て、入り口近くに戻る。欲しい本はいくらもあったけど、ホルヘ・ルイス・ボルヘス『ボルヘス・エッセイ集』(木村榮一 訳 平凡社ライブラリー)600円と J.-K. ユイスマンス『彼方』(田辺貞之助 訳 創元推理文庫)500円を買うことにした。おっちゃんは「ありがとう! うん、1,100円か……1,000円にしときましょう」とにっこり。おまけしてもらっちゃった。ありがとう、おっちゃん。また行かしてもらいます。

店を出たら、空には桃色の雲。


さて、うどんだ。前に行ったお店が美味くて安かった(きつねうどん270円)し、駅に近いし、そこで食べて帰るのもいいなと、営業時間を確認しようとしてわかったのだが、そのお店は残念ながら2017年に閉店されていた……残念だが、仕方ない。あれこれ調べるより歩いて見つけた店に入ってみよう、ということで、リバー書房さんからほど近い商店街で目についたさぬき麺業さんに入店、注文後、待っている間に購入した本の写真を撮っていて、隣の席の人に「なにやってるのかしら」という目で見られるなど。


負けない。


天ぷらと温玉のぶっかけうどん(温)。正式名称は忘れた。揚げたての天ぷらがさくさくと美味しかった。


さ、帰ろう。駅に着いたが電車の時間にはまだ間があるので、土産物など見て行こう……なんだお前は。


うどん県観光課係長 うどん健氏。公務員、しかも管理職。白皙の美男子である。袖のフリンジも原材料は小麦粉なのだろうか。ていうか服装かなり自由だな。いい県だ。

健さんのグッズはおいといて、ほかの土産を物色。半生タイプや乾麺と、お土産うどんの種類が豊富なのは理解できるが、うどん煎餅、うどん風味キャラメル、うどん風グミという異色の土産はなんなのだ。ほんまになんでもかんでもうどんやな。どんな味やねん、ってかつお出汁ですね、いうまでもないね。グミは形だけがうどん風で、味はレモンらしく、ちょっと安心した。まあ無難にうどんの揚げ菓子にしておく。塩味のとカレー味の。いや、しかし楽しかったな。うん、次回こそは、まぼろしのうどん店への入店を果たす。待ってろよ、って別にお店に責任があるわけじゃないんだけれども。