2015-04-15

明石場当たり散歩(亀→蛸→蜻蛉→亀→蛸)――春の18きっぷ旅 播州編(後)

(承前)


わかめのことは忘れることにして、次の目的地へ。雨も降っていることだし、たこのみりん干しをかばんにしまって歩き出す。

駅の観光案内所でもらってきた「ふるさとの道をたずねて 喜春城(明石城)と柿本人麻呂の道」というリーフレットによると、柿本神社という神社があるらしい。「柿本神社」で「人麻呂の道」コースに入っているというのに説明書きもなにもないので、かえって興味をそそられる。それに、以前明石の観光名所を調べていて気になっていた、弘法大師ゆかりの寺という月照寺(こちらも説明書きなし)も近いようだし。ちょっと行ってみようではないか、と、せっかくのおすすめコースをいきなり無視、線路沿いに歩いて神社を目指す。住宅街を歩いていると、「亀の水→」という表示がある。なんだろう、「亀の水」って。亀を育てるのに好適な水なのだろうか(それはない、という気がおおいにする)。それとも傷ついた亀についていったら湧いていた、万病を癒す水とかなのか(それもない、という気がちょっとする)。非常に気になるのでそっち先に行くか。だいたい常にひとのいうことを聞く気のないわたしには、「おすすめコース」は意味を成さないのであった。

さて、目的地を変更、「亀の水」へ向かおうとしていたのであるが、いつしか「亀の水→」という表示を見失い、あっちへふらふら、こっちへふらふらしているうちに、二番目の目的地であった月照寺への参道入り口に偶然着いてしまった。


人生なんて、人生なんてこんなもんなのか。なんとかなるようになっているのか。さ、月照寺にお参りしてきましょう。

椿の花の落ちるままに捨て置かれている石段を登ると、月照寺。


あれ、曹洞宗なのか。空海ゆかりのお寺というから真言宗かと思ってたけど。しかしここへきて、求めていたものがすべてそろっていることに驚く。すぐお隣が柿本神社、向かいが明石天文記念館、そして「亀の水→」の標識。なんというか、ここに一堂に会していた。やはり人生こんなもん。なんとかなるようになっている。ありがたや。

月照寺は観光寺ではないので、お邪魔をしないように静かに見学して、お隣の柿本神社に向かう。由来をみたところ、こちらは神仏分離令によって月照寺から分かれたそうで、もともとは月照寺の鎮守だった由。近くて当たり前。てことはだ、わたしの人生が放っといてもなんとかなるようになっているわけではないと、こういうことだな。ほろ苦いな。

手水舎。


近づいたら亀の口から急に水が出たので、ビクっとしてしまった自分につい笑う。センサーで制御されてるのだね。しかし神社やお寺の亀には耳があるね。ほんで鼻づらも長くて牙があるね。あと、碑が乗っかっていることが多い(この神社にもあった)けど、あれはなんでだろうね。 なんにせよ、われわれの知る動物「亀」とはちがう生き物なのだろうね。

帰ってから調べてみたら、これは中国の「贔屓(ひき、または、びし)」という神獣で、 碑の台座になっているものを「亀趺(きふ)」というのだそう。龍の生んだ九頭の子の一頭で、性質は「重きを負うことを好む」とか。だから碑を背負わせているのだろうか。

余談だけど、調べる際に参考にしようとしたら、つい読みふけってしまった沼のような本があるのでご紹介。 『カラー図鑑 カメのすべて』(高橋泉 著 三上昇 監修 成美堂出版) 「すべて」というだけあって、カメに関するさまざまなことが網羅されている。亀の子タワシの解説まである。コレめちゃくちゃ面白いです。

カメのすべて (カラー図鑑シリーズ)
高橋 泉 三上 昇
441508561X


さらに余談だけど、この本には、島根県松江市の「月照寺」の亀趺が載っていた。調べてみたら、松江の月照寺には大亀伝説があるのだとか。「月照寺」と「亀」にはなにか関係があるのだろうか。

お社。



御守り等の授与所を覗くと「合格たこ御守」というものが。たこと合格の関係ってなに?と思い、調べてみたところ、

「たこ」は英語で"octopus"→「オクトパス」→「おくとパス」→「置くとパス」→「置くと[試験に]パス(合格)」……バンザーイ!

駄洒r……う、うまいやないか。なお、実際に買われた方によると、設置面にはなんと「滑り止め」がついているという、なんとも至れり尽くせりな、合格させます!の意気込みがうかがわれる安全設計。すばらしい。
ところで、苦しいダジャレ……いや「置くとパス」は苦しくはないですけど、苦しいヤツを一瞬で救済する魔法のことば、「バンザーイ!」 っての、関西だけのものなのだろうか?


お参りして外へ出ると、すぐ向かいが明石市立天文科学館で、子午線標識(1930年建立)が立っている。


てっぺんのトンボがかわいい。この右手の石段(どうもこちらが月照寺の表参道らしい)を下りると、「亀の水」があるということなので、行ってみよう。


ありました。柿本神社の手水舎の亀みたいなのがいる。こちらのほうは口から水が出っ放しである。


亀の口から水がどんどん出ている。由来書などはなく、なぜ亀なのかはわからない。飲めるのかどうかもわからないが、「飲めません」とは書いてないし、汲むのに使うらしいステンレス製の器具が置いてあるので、飲める水だろうとは思われる。汲んじゃえ。残り少なくなっていたペットボトルの水を飲み干し、 それに汲んで、ひとくち飲んでみた。わたしがいつも飲んでいる京都の地下水よりも、塩気というかミネラル気を感じた。海が近いからかと思ったけど、よく考えたらこれは山の水なので、気のせいか花粉で舌がバカになっているせいか、そのどっちかだろう。
……しかし、飲んでおいてなんなのだが、ちょっと心配になってきた(ふつう飲む前に心配すべきだろうが)。たしかに「飲めません」とはどこにも書いてないのだけど、「飲めます」とも書いてない、というかそれ以前にまったくなんにも書いてない。飲める水の湧いているところによく置いてあるコップ等もないので、生で飲んでいいかどうかわからない。これは持ち帰って調べてからにすべきだろうな。ただでさえオナカ弱いんだから。なら、なおさら飲む前に考えろ、なのだけど。
(帰って調べたら、「飲用になるが、水質検査をしていないので沸かして飲むように」 とのこと。わたしも腹はこわさなかったけど、ひと口しか飲んでないので、大量に飲んでも大丈夫と保証はできない)

水は翌日職場に持っていく茶をわかすのに使おう。さて、じゅうぶん楽しんだ。帰るとするか。


帰りの電車で、そういえばたこのみりん干しをかばんに入れたままだったと気づく。混んでいる電車内で運よく座ることができたのだけど、このままかばんを膝に置いておいては、しょうが醤油はいいとしても、みりん干しが温まってしまう。 それは避けたい。たこだけでも荷棚に上げておこうか、と身動きしたら、通路側に座った女性が立とうとしてくれる気配を見せたので、そんなことで立ってもらうのは悪いなと思い、ごめんなさい、ちょっと体勢変えようとしただけなんです、お気づかいありがとうございます的に会釈して、そのままたこを温めておくことにした。おかげで、その後しばらくわたしのかばんの中はたこ臭かったのであった。



たこ飯、うまかった。

2 件のコメント:

  1. お疲れ様でした。

    旅行に出かけて2時間待ちは、自分の中ではありえないですね。
    2時間あれば街をウロウロしているだけで、面白いものがたくさん見つかりそうです。

    桜の綺麗なこと・・・。
    姫路城の桜も良いですが、明石の池の桜がとくに素敵ですね。

    「ひ-尿器」、上側に「しずく」とあるのがまた絶妙で、何やら尿漏れを想像してしまいますね。

    自分が最近訪れた総持寺にも、この「体は亀、頭部は哺乳類」なる生き物の像がありました。
    そう言い出すと狛犬も犬だか獅子だか分からないし、神社仏閣の彫像などそのようなものなのかもしれませんが。

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    1. れぽれろさん、コメントありがとうございます。

      わたしも2時間待ちはありえないです。それよりウロウロ歩き回るほうです。そのほうが面白いもの見つかりますもんね。

      明石の池の桜は、ほんとに屋上庭園にふらっと入ってみてよかったです。

      あ、「しずく」で「尿漏れ」までは想像しませんでした。なんかすごく負けた気がします(笑)。

      記事を書いたあとで思い出したのですが、「贔屓」は、そういえば一緒に神社仏閣をめぐっていた友人に教えてもらったのでした。狛犬も、アジアのライオンには(たぶん)たてがみがないので、架空の動物なんじゃないかな、とよく調べもせずに思っております。

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