ついこの間まで寒かったかと思えば突然の夏日、どうしていいか途方に暮れている麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。途方に暮れていませんか。
4月某日、春の18きっぷ旅は今日も東へ(そして北へ)。
今日はまず湖西線に乗車。皆さんよく御存じで、琵琶湖側の席はすべて埋まっていた。眺めがそういいわけではない側に乗ったので読書がはかどった。負け惜しみではない。断じてない。ちなみに本日のお供は池澤夏樹『マリコ/マリキータ』(文春文庫)。この本を読むのは二度目。池澤夏樹の文章はねちっこさがまったくなくて心地よいのだけど、「冒険」は書簡体とあって、論理の飛躍あり憶測ありと、まったく池澤夏樹的でない文章が綿々と綴られているのが面白い。
敦賀から北陸線へ。福井で乗り換え。
恐竜が二列に並ぶように促している。
北陸本線では小松あたりで白山(※ずっと立山だと思っていたけど、金沢の方がこっそり教えてくれましたので、しれっと訂正しておきます)が見えてくるのが楽しみ、なのだけど、やっぱり皆さんよく御存じで、そちら側の席はすぐ埋まってしまった。しかたなく(?)でかいブツが見える側に座る。
まあこれはこれで楽しい。負け惜しみではない。ないといったらない。
某駅ではたいそう傾いた状態で停車。
西金沢駅着。
あと一駅で金沢のこの駅、地元民以外で下車したのはおそらくわたし一人であろう。
ごらんのとおり、観光客が降りる理由は皆無である。
ではなぜわたしが降りたのかというと、事前に昼食をどこでとろうか調べていて、ここによさそうな店があったのと、カメラをくださった方に以前送ってとても喜ばれた米蜜ビスケットの製造元である 北陸製菓 の工場直売店があったからだ。お住まいの場所からだと通販を利用するしかないとおっしゃっていたので、じゃあカメラの返礼品のひとつとして送ろうか、と考えたわけで。食堂は駅の北西、北菓の工場は駅の南西にある。ということで、駅を出たらまず食事をして、菓子を買い、駅に戻るというルートを考えていた。ところが道順と目印を書いた手帳を家に置き忘れてきてしまった。食堂の場所は覚えている。北菓の工場は……まあスマホで検索すればいいだけなんだけど、どうせなら金沢散歩の時間を多く取ったほうがいいのではないか。金沢にも売ってるだろうし、もしも駅の土産物売場で買えるならば面倒もない。てことで食堂から駅に直帰に計画変更、出発。
道中、この○ッキーにはちょっとビビった。
あまり純な感じがしない喫茶。
歩くこと15分、 あじの沢 にしかね に到着。
わたしと入れ違いにお客さんが二人出てきたところで、すぐに着席できた。おかずがぶりの塩焼きだったので、迷わず日替り定食を注文。玉子焼きを切り、刺身を引き、天ぷらを揚げ、ぶりを焼き、と一瞬も動きを止めない大将を感心しながら見ていると、出てきました。
日替り定食(630円)。
ぶりの塩焼き、サラダ(玉子焼きとコロッケの小さく切ったのが乗せてある)、刺身(端っこのところ)、香の物、飯、ほうれんそうの味噌汁。こんなに盛りだくさんで630円……うれしい。刺身は醤油をかけたツマの上に盛ってあるのかな、独特な盛り付けだ、と思ったら、下には豆腐が忍ばせてあった。冷奴の刺身乗せだったのか。そうかと思えばサラダの下には煮びたしのようなものが……なんだかおもしろい。そしておいしかった。ごちそうさまでした。
駅へ戻る。次の電車は……30分後。前のが出たばかりだった。
せっかくなので少し歩こうと思い、先ほど出たのと反対側の入り口に行ってみると、すぐ近くでハクモクレンが見事に咲いていた。
うちのあたりより少し遅いのだな。ちょうどいい時期に来られた。
では、金沢へ。
はい来ました。まずは駅の土産売り場に米蜜ビスケットがあるかどうか確認……ないですね。「金沢に行ってきました」的なのはあるけれども。まあ本拠地が金沢であっても、「金沢土産」かといったらそれは違うしね。スーパーとかコンビニに売ってるんでしょ。そういうもんでしょ。
では出発。
さて、どこから攻めようか。駅の土産物売場でも売っていて何度か商品を買って帰ったことはあるけど、市の保存建造物に指定されている店舗をまだ見たことがなかった 俵屋 本店 に行ってみたいということだけは事前に決めていたのだった。そこで週末に会う予定の人たちへの手土産と、カメラの返礼品、そしてせっかくだから自分用にもじろあめを買いたい。となるとけっこうな荷物になるのでなるべく後回しにしたほうがよかろうとは思うけれども、時間切れで買えなかったらイヤだ。よし、俵屋だ。道中のスーパーかコンビニでビスケを買おう。
俵屋到着。ビスケは買えず。
現在は感染拡大防止のため、入店できるのは一度に一組となっている。この写真を撮っているとき、ちょうどお客さんが出て行くところだった。即入店、じろあめを4つ、飴棒を4袋購入。飴玉をひとつおまけにいただいた。
ここからはまた浅野川に沿って歩く。川沿いに行けなくなると住宅街を、主計町に向かう。
なんの説明もないけど、なにかの店だったのかな。
美の女神の内部。
じんわりおもしろい。
茶屋街に来ました。ふと路地を覗くと枝垂桜。
それはともかく、ここまでスーパーにもコンビニにも出くわさなかった。当然ビスケは買えず。
そうだそうだ、ここまで来たんなら、行こうじゃないの、泉鏡花記念館……
か、火曜閉館。でしたっけ?
そうだ、このへんには徳田秋聲の……
火曜閉館!去年から!
うーむこのぶんでは金沢文芸館も室生犀星記念館も同様だろうな(同様でした)。文学好きは火曜の金沢は避けなさるがよい(おれの屍を越えて行ってください)。
ま、桜見ていきましょうかね(抜け殻のごとくふらふらと)。
きれーだねえ。ああ、そうだ、当然のごとくではあるけれども、スーパーとかコンビニ、なかったねえ。ビスケ買えなかったねえ。
わたしは金沢を舐めていた。これまでのところ、歩けども歩けども、スーパーはおろかコンビニさえ見かけない。出先で地元のスーパーに入るのが好きなわたくし、そういえば金沢市中心部あたりでスーパーを見た記憶がないのであった。俵屋を目指して歩いていたとき、浅野川に着いたあたりで遠くにコンビニが1軒あるのが見えたが、わざわざあそこまでいかなくても、と思ってさっさと道を曲がってしまったことが悔やまれる。ていうかみんなどこで買いものしてるんだ。市場か。
心折れそうになったそのとき、とある場所で店先に古道具のワゴンを出しているのが目に入った。寄っていくか。中はいくつかのショップが入っているところのようだ。奥には金沢に限らず北陸のよいものがいろいろ……あるではないか、米蜜ビスケットが!
はー、一安心。浅野川のほとりに腰を下ろす。
とりあえずはミッションコンプリート。
しばし休憩。場所はなんぼでもあるのになぜかわたしの真後ろに座った大学生数人の話(単位がどうとかまさに大学生~って感じの話題であった)を聞くともなく聞いたのち、再び歩き出す。近くに天然記念物の松並木があるというのでそれを見に行こうとしたところ、いい感じのバス停を見つけて寄り道。
これまた見事なハクモクレン。
夢のようだ。
ハクモクレンをぼーっと見上げていると、「きれいねえ」と地元のおばちゃんが話しかけてきたので、しばらく立ち話。この木、今年はいちだんと美しいのだそうだ。いい時に来られてよかった。
おばちゃんと別れ、近くの自販機でお茶を買おうとしたら、「いらっしゃいませ。少しずつ暖かくなってきましたね」と喋る自販機。
おまえは話しかけてこんでいい。怖いから。
天神橋からの眺め。
こんなふうに、雪を頂く白山が見えるのですよ。いいねえ。
恐怖の自販機で買ったお茶を飲みながら、やってきました並木町の松並木。
加賀藩三代藩主 前田利常の時代に護岸のために植えられたのがはじまりという。金沢には何度か来ているけど、これを見るのは初めてなんじゃないかな。
並木に沿って行くと滝の白糸像があるとか。
むっ
手をピタっと。
おー……(楽しいというほどではなかった)
目的は果たしたし、ぼちぼち帰ろう。百万石通りを駅に向かって歩く。そういえばここ、前にも通ったんだよね。ということは……
なぜか不安を感じさせる美容室への誘いは健在であった。
そして謎のダクトも。
けっこう余裕を持って出たと思ったが、案外時間がかかり(こんな写真撮ってるから)、急いで笹巻き寿司を買って乗車。帰りは白山が見えるほうの席が取れた。
以前来たときに時間切れで立ち寄れなかった古道具店には、今回も立ち寄れなかった。立ち寄れなかったといえば、泉鏡花!徳田秋声!(くれぐれも火曜は避けること)(前回泉鏡花記念館を訪れたときのことはこちら → 「腹減り過ぎてロクなことなし、そして巨大物ふたたび ― 春の18きっぷ旅 加州編(後)」 )。武家屋敷も見たいし、犀川のあたりをまた散策してみたい(犀川はこのときに行ったのでした → 「金沢21世紀美術館へ行ってきましたりなんだり ― 夏の18きっぷ旅」 )。そうだ、中央卸売市場方面にも行ってみたい。これ絶対一日でぜんぶは無理。ということは、あと数回は訪れねばならぬな(ワクワク)。また来るよ、金沢。
車窓より。
ヤツの姿も。
あそこにも一度行ってみたいような……(行かなくてもいいような気がおおいにする)
敦賀で乗り換えた電車は、湖西線でなく琵琶湖線経由で、期せずして琵琶湖一周。しかし行きは座席が琵琶湖側でなく、帰りは琵琶湖側に座るも真っ暗で、単に琵琶湖の周りを回ったというだけであった。まあいいんだけど。なんなら自転車で行けるし。
午後10時になる少し前、最寄駅到着。
うちの近所のソメイヨシノもいまが盛りであった。
帰宅してみると、オブツサ子1号の2番目の花が開花していた。今日も主人不在ですまなかった。
本日の歩数、18,468歩。明日左膝が痛むことが約束された(すでに痛い)。
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