シルバーウィークという言葉が実質的に意味を成さない環境で仕事をしているのだけど、最終日の9月23日は休日で、奈良に出かけてきたのだった。前日までに終わらせられなかった仕事を片付けたら、家を出るのが10時前になってしまい、途中まで急行を利用できなかったこともあって、奈良に着いたのはお昼前。ということで、まずは昼飯。前日昼飯をうどんにするか蕎麦にするかで40分悩んでいたのだが、結局決断できずにここにいたる。車中でも、うどんの店の近くには大安寺があって、そこまでの道も風情があっていいけど、もう何度も食べているしなあ、蕎麦の店はすごく評判いいけど、あの辺なんにもないしなあ、とかなんとかぐだぐだ考えてやっぱり決められず、駅に着いたときの気分次第ということにしたのだった。
着いたときは蕎麦の気分だった。とはいえ途中までの方向は同じ。駅から西に歩いて「やすらぎの道」に出る。ここで右に行くか左に行くかで昼飯が決まるってまだ決めてないのかわたしは。えい、うどんだ。で、いったんはうどん方面に歩き始めたのだけど、30歩くらい歩いて、いや、やっぱり蕎麦、と方向転換。優柔不断というのとはたぶん違う。そのときどきで答えは決まっているのだ。尋ねられたら即答できる。ただ時によってその答えが一定していないだけだ。どんな理屈だ。
決まったらさっさと向かうべし。ということでカンカン照りの太陽の下、場所はうろ覚え、店名は忘却の彼方の蕎麦屋を目指して歩き出す、その道中の陽気なこと! いや嘘です。連れもなく、加えてこのところの涼しさにすっかり我慢弱くなったわたしは、暑さにへばり気味でだらだら歩いてました。
ま、道中にはこんなものがあって、一時的に陽気になったりもした。
なにかというと、ワイヤープランツのカタマリなのである。こんななってるの、はじめて見た。奈良は内陸性猛暑の地のはずだが、高温多湿に弱いんじゃなかったのか君は。「夏は直射日光に注意」とかいわれてなかったか。いまガンガンに日が当たってるぞ。
バケモノと化したワイヤープランツをやり過ごし、えっと、この辺で曲がってみるかな。遠くのほうになんか看板見えてるし。
……行ってみたら、それは墨屋さんの看板だった。しかしその向こうに、のれんがひらひらしているではないか。あれだ。
……「営業中」の看板が出ている食べもの屋ではあったが、表にはメニューがなく、どんな料理をいくらくらいで出しているのか皆目わからない。二階のほうには「世界の小麦粉料理」とある。なんにせよ、「小麦粉料理」ということは、蕎麦屋ではない。
うーん、もうちょっと先へ行ってみて、違う通りも見てみるかな、と思ったころ、出し抜けにその店が現われた。
「蕎麦処 和」さん。うむ、目立たない。そして好きな感じのお店。格子戸を開けてなかへ入る。「こんにちは」と言ってみたが誰も出てこない。中は二部屋になっていて、どちらの部屋も二人連れの客が蕎麦をたぐっていた。奥の部屋に勝手に入って、勝手に座るとおばちゃんがお茶を持ってきてくれた。おろし蕎麦(900円)を注文。蕎麦は三種類から選べるというので、田舎蕎麦でお願いした。
はじめに揚げ蕎麦が出てきたので、ポリポリ食べながら待つことしばし、おろし蕎麦が来ました。
ピカピカだ! お出汁をかけてねぎ全投入、わさびを少しずつ溶いていただいた。蕎麦うまし! よかった蕎麦にして! うどんにしてたらうどんにしてたでよかったと思っていたことだろうが(わたしは悩むわりには食にさほど執着はない)、それはともかく蕎麦うまい! しかしいまの時期の大根は味がぼけているので、ざるにしておいたほうがよかったかもしれないと、食べてから思うのではちょっと遅いのだけど、まあいつものことなので気にしない。(ああ、食べ歩きブログではないので、レビューは期待しないでください。じゃあ何ブログなんだと尋ねられたら全力で気をそらしにかかりますので悪しからずご了承くださいませ。書いている本人にもなんだかよくわかってはおらぬのです)
このあと蕎麦湯がたっぷり出てきた。濃くておいしい。揚げ蕎麦もかなりの分量で、はじめミニ天丼も頼もうかと思っていたのだけど、これだけで腹はもちそう。帰りにうどんの店に行くというのもアリだしな。
さて、腹も満たしたし、目的地、奈良公園へ向かう。道々遭遇するのは当然、
……なんだお前は。「新発売!毛皮の手触りワイヤレス光学マウス」(※そんなものはありません、たぶん)か。掘り出されたばかりの鳴門金時か。いやまあ鹿なんですけど、この形はないだろう。それはともかくとして、奈良において鹿はアニマルキングダムの頂点に君臨しているといっても過言ではなく、まさに傍若無人。野放図。いや野生動物だからいいのか、それで。
鹿 「わしゃ歩きたければ車道を歩くのじゃ。車がよければよいのじゃ」
「渡りたければ信号が赤でもわしゃ渡るのじゃ。人間は青になるまで待つがよい」
「わしゃ掘りたければ養生中の芝生も掘るのじゃ。土は車道に飛ばすのじゃ」
「今日は暑いのう。 暑い時はこうするのが一番じゃ。皆も入るがよいぞ」
「人間は二種類に分類される。鹿せんべいを持つ者と、持たぬ者に。持たぬものは基本的に無視じゃ」
※写真は、持たないわたしを華麗にスルーなさる鹿様
しかし、そんな鹿様方の上に立つキング・オブ・キングス 、そんな存在が奈良にはいるのである。それが鹿せんべい売りのおばちゃんたちだ!……キングじゃねえな。しかもひとりじゃないし。まあいいや、ともかく鹿せんべいスタンドには、鹿たちは近づかない。そこでせんべいを買った人々には殺到して子どもを泣かしたりする鹿たちがである。静かに座ってせんべいを売っているおばちゃんたちの力量いかばかりか。その底知れなさには、まこと戦慄するのみである。
……んなことに戦慄している場合ではなかった。わたしは別に鹿を見に来たわけではなくてですね、
こういうのとか、
こういうのを見に来たわけですよ。なにやってんだ。
(続く)
私もシルバーウィークに西ノ京を散策していましたが、流石、西ノ京は田舎。お寺は人も少なくゆったりしていました。
返信削除その後、奈良に戻って、ビックリ!人人人。連休をある意味満喫しました(^^ゞ
観光客のおかげで、「鹿肥える秋」だったのでしょうね(笑)
をやzi~さん、コメントありがとうございます。
削除西ノ京は、だいたいいつもすいてますね。そういうところも含めて好きな場所です。のんびり歩くと楽しいところですよね。わたしが行った日も、奈良公園界隈はすごい人でした。外国人観光客が増えてましたねー。みんな鹿せんべい持ってました(笑)。