2015-08-28

ほんとうに勉強になります――本日の「夏休み子ども科学電話相談」 2015/08/28

夏休み期間中、小さいおともだち以上に、大きいおともだちを燃え上がらせる稀有な番組、「夏休み子ども科学電話相談」も、今年は本日が最終日。このあとは、来夏まで燃え殻でいることが予想される麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。燃える思いはなさいましたか。余計なお世話ですね。


番組は本日もおおいに盛り上がっておりました。


本日の先生方:

植物: 恵泉女学園大学 教授 藤田 智 先生
昆虫: ぐんま昆虫の森 名誉園長 矢島 稔 先生
魚: 横須賀市 自然・人文博物館 元館長 林 公義 先生
天文・宇宙: 国立天文台 副台長 渡部 潤一 先生

進行は金井 直己 アナウンサー。


さて、どこから参りましょうか。今日は宇宙先生がいらっしゃるからな、やっぱりこれかな。

本日の「スケールがちがう」編

小4男子 「隕石の衝突はまた起こるのですか? 隕石の衝突は予測できるのですか?」
渡部先生 「小さいものは、現在の望遠鏡や監視システムでは予測できません。2013年にロシアに落ちた小惑星は直径が20メーターくらいでしたが、それは予測できなかった。一方、その翌日50メーターくらいの小惑星が地球に接近するという天文現象がありました。そちらのほうは1年くらい前から予測ができていました」

直径20メーターの隕石が突然降ってくることを想像すると、われわれ人間的には相当でかくてかなりの脅威だが、宇宙や地球的視点から見ると小さいのな……


小1男子 「宇宙に火山はあるんですか?宇宙の火山は爆発するんですか?」
渡部先生 「火星にはオリンポス火山という、2万7千メーターの火山があって、この火山、つい最近まで噴いてました」
金井アナ 「つい最近までって何年前くらいですか」
渡部先生 「あ、天文学者のいう『つい最近』ですから、だいたい1億年とかですね

後ろでほかの先生方大笑い。 2万7千メーターの山ってのもすごいが、「天文学者のつい最近=1億年」!ちなみにわたしの「つい最近」は、長くて2年前までです。天文学者のスケールは、わたしの5000万倍と判明。不肖麩之介、あらためて自分の小ささを知りました。というわけで、林先生の「だいぶ昔、500万年前」という発言に、あ、普通だこの人、って思ってしまった。いや、時間の感覚のことがですよ。


ついでに渡部先生の、本日の「謎の例え」編

さそり座のアンタレスが赤い色であることを説明する際、

渡部先生 「星が赤いのは、年をとっているから。星は年をとると、表面の温度が下がって赤くなるんです。人間も60歳になると還暦で赤いちゃんちゃんこ着たりするでしょう?それと同じように

せんせい、それとは違うのではないかという気がおおいにするのですが。しめくくりに先生、「赤い星はだいたいご老人の星だと思ってください」と、最後まで星を擬人化。


本日の「味わい深い会話」編

渡部先生「超新星の爆発、小4男子くんも見たいでしょ?ぼくも見たいんです。天文学者は待ち望んでるんです!」
小4男子「……爆発するとなんかいいことがあるんですか?」
渡部先生「……一般の人には特にいいことはないかな」


金井アナ 「小5男子くんはどの星が好きなの?」
小5男子 「わし座のアルタイル」
渡部先生 「彦星ですね。神話の彦星は仕事サボって神様の怒りを買ったので……彦星のようにはならないほうがいいですね」


本日の「先生それは……」編

林先生 「ヒメハゼはオスが明瞭な婚姻色を出しますが、婚姻色を出すのはエネルギーが要ります。だから素敵なメスにアピールするときだけ出す。小5男子くんは経験あるかな、素敵な女性を見ると頭がカーッとするんだけど?」


本日の「藤田先生」編(すでにジャンル化)

小1女子の「レンコンはなんで穴があいてるんですか」という質問に、藤田先生「あの穴は空気の通り道。水の中にある根っこにだけあるのではなく、水の上に出ている茎や葉っぱにずっとつながっていて、それを通して根っこに空気を送っている」と答えたまでは、流石!なんだけど。

藤田先生 「ところでお正月になんでレンコン食べるか知ってます?」
小1女子 「……」
わたし (ああ、先生なぜここで薀蓄つめこみ教育を)
金井アナ 「酢ばす!」
わたし (アンタがくいついてどうするよ)

ちなみに答えは「あの穴からは向こうが見える、つまり見通しがいいということなんですね」だそうです。そしてさらに先生、「如雨露の先のシャワーみたいに水の出るところ、あれは『ハス口』といいます」と薀蓄を畳み掛け、とどめに「小1女子さんは、兵庫県だから、レンコンの田んぼ、どっかにあるはずです! 探して見てみてくださいね」って先生、エリアが広すぎです! しかし、結果的に質問者をおいてけぼりにしても、知ってることはぜんぶ伝えたい藤田先生の教育者魂に涙(が出るほど笑う)。


次です。「四つ葉のクローバーはなぜ生えるんですか」という質問に、先生「クローバーは、ふつうは三つ葉で、四つ葉は1万~10万本に1本見つかるだけだけど、よく人が踏むところや、農薬をつくるところの近くでは、確率が上がります。そういうところには四つ葉だけでなく五つ葉、六つ葉があったりする」と説明してから、「四つ葉のクローバーを10本くらいとってきて、水につけておくと、そのうち6本くらいは根が出てきます。幸せが根付く!ということでございます!」 出ました!恒例の大喜利です!座布団持ってきてあげて!


今日聴いてて個人的に「へえ!」と思ったこと五つ。

・トビウオは600メーターの距離を飛ぶ

・流れ星は1mm~1cmの砂粒

・ オシロイバナは英語で"four o'clock"という

・アメンボはカメムシ

・タガメ(これもカメムシ)はバナナの匂いを出す


では、本日わたくしの心に残った質疑応答をば。

質問: 「カブトムシは恋をするんですか?」 (小2男子)

この質問を聞いた矢島先生、「素敵な質問だなあ」 そういう言葉が出てくる矢島先生も素敵だ。しかしこのあとの、

矢島先生 「あなたはまだ恋してないね」
小2男子 「……」
金井アナ 「まだ2年生ですから……」

に吹いた。

矢島先生  「あなたはこれ、誰かから聞いたの」
小2男子  「カブトムシ飼ってて、見ました」

……「見た」? に関しては先生深追いせず、「 ぼくはねえ、すると思うんです。オスとメスがあるから。あのメスは素敵だなと思うことがあると思うんだよね。でも人間の恋とカブトムシの恋は同じなのか、それは難しい」 (む。深いお答え) 「だってカブトムシに、あなたこっちのメス?あっちのメス?どっちが好きなの?って聞けないじゃない」 (そうだよね)

矢島先生 「カブト虫は木の汁を吸うの。あなた見たことある?」
小2男子 「ないです」

ないのか。先生、ちょっとエサのことが気になっている感じだ。これは……出るな(期待と不安)。

矢島先生「クヌギの木の樹液を吸う餌場では、カブトムシのオスはメスを攻撃しない。むしろかばおうとする。それが恋かはカブトムシに聞いてみなけりゃわからないんだけどね。そのあと交尾したりする。 相手にいい餌をとってもらって、それで交尾して卵を産んでもらう。あなたの飼ってるカブトムシ、もう交尾はした?」
小2男子「もう全部死んじゃいました」

なんと……恋(かどうかは聞かんとわからんが)する前に全滅。

矢島先生「あなた、エサはなにをあげてたの?」

そらきた。色めきたつTL。

小2男子 「昆虫ゼリー
大きいおともだち全員 (いっちゃった!)(地雷踏んだ!)
矢島先生 だからさあー、 昆虫ゼリーはダメなのよあれはー

出ました! 今年も矢島先生のこれが聴けて、もうわたくし、思い残すことはございません!

矢島先生「 「いちばんいいのは果物なの」
小2男子「果物もあげてました。モモ」
矢島先生「モモってのはねえ、溶けちゃうんだよね。だからほんとはリンゴがいい。来年からはリンゴをあげてください」

矢島先生、安定のリンゴ推し。「エサはなにを」にはじまり、「リンゴをあげて」で完結するこの一連の流れには、すでに様式美というべきものが見られるといっていいのではないだろうか。


もうひとつ。

質問: 「キュウリは下向きに実がつくのに、なぜオクラは上向きに実がつくのですか」 (中1男子)

藤田先生 「上を向いてなる野菜、オクラのほかに何がありますか?
中1男子 「……パイナップル?」
藤田先生 「あー……パイナップルねえ……そうだねえ、あとね、ソラマメとか、トウガラシね」

む。藤田先生、「パイナップル」という答えに虚をつかれた感じがしたぞ。

続けて先生、「下を向いてなるのはキュウリやナスやトマト、スイカ、ゴーヤなど。比べると、上を向くのは軽い実で、下を向くのは重い実なんですね」と説明して、

藤田先生 「パイナップルやトウモロコシも重いけど、上を向いてなるでしょう?」
金井アナ 「あっ、そうですね」
藤田先生 それはね、なんでかわかりませんハハハ」

後ろの先生方、大爆笑。パイナップルという答えが返ってきて、先生ちょっと予想外って感じだったのは、それでか。でも、前にもいったけど、わからないことを「わからない」っていえるのは、ホントにえらいんだぞ。だからわたしはこれを聞いてちょっと感動した。爆笑もしたけれども。



さて、最後の質問を聴き終わった。今日は質問した子たちのほとんどが、自分で観察して疑問に思ったことを尋ねてくるので、先生方も「あなたとってもいいところを見たね」、「よく気がつきましたね」、「それ、大発見だよ」、とノリノリで答えてらっしゃるのが、とても印象的だった。以前、自分で飼ってもいない、図鑑で見たこともないという虫のことを質問してきた子に、「じゃあなんで……」と一瞬絶句して、そのあとキレ気味に回答された矢島先生も、今日は上機嫌でいらしてなによりでした。


締めくくりに先生方がひとことずつ。

矢島先生 「この番組に出ると、ほんとうに勉強になるんですよ。帰ってからすごく勉強したりするんです。子どもの直感には研究テーマがいっぱいみつかる。ほんとうに勉強になります」

林先生 「1対1の話が終わってから、こういうことを知りたかったのかな、ここをお話しすればよかったなあって、あとで気がつくことがあって、それが悔しい」

渡辺先生 「講演会のあとの質問に答えるほうが楽ですね。子どもの質問は鋭いです」

藤田先生 「自分が専門にしているのに、キュウリやオクラの実のなり方なんて、人にいわれてはじめて、ああ、そうだ、って思います。勉強が足りないと思いました」

どんな分野でも、一流の人のいうことってこうなんだよね。もう自分は完璧、なんてことがない。相手が子どもでも、絶対になめてかかったりしないし、逆に教えられることがあるとおっしゃる。回答では、ときどき情報量が子どもたちのキャパシティを超えてしまったりもするけど、子どもたちの「知りたい」という気持ちを大切にして、全力で向き合う先生方の姿に頭が下がる思いがする。来年も、先生方と子どもたちにお会いできること、それだけを心のよすがに生きていきます。 それでは、ごきげんよう、また来年。(当駄ブログは休眠しません、たぶん)


オマケ: 今年の夏の古本まつりで手に入れた、矢島先生の本。毎日ちょっとずつ読んでます。

2 件のコメント:

  1. 夏休み子ども科学相談を聴くのが夏の何よりの楽しみです。最終日に矢島稔先生の「昆虫ゼリーはだめ」の下りが聴けて夏の終わりを実感しました。こうして「まとめ」て下さるブログを拝見出来るのも嬉しい事でした。
    ありがとうございます。

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    1. コメントありがとうございます。

      ほんとうに面白いですよね。子どものころから大好きな番組で、毎年聴き続けて、気づいたら中年です(笑)。
      わたしのは、「まとめ」というか、自分がどんなことを面白がっていたのかを記録しているのですが、「嬉しい事」とおっしゃっていただいて、こちらこそとても嬉しいです。ありがとうございます。

      また来年も(たぶん)やりますので、よろしければ、覗いてやってくださいませ。

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