2022-10-01

大山崎 Revisited ― 散歩 DE マンポふたたび

9月も末になるとさすがに涼しくなり、もういらないかと扇風機を片づけたその翌日、見事に夏が戻ってまいりました。10月朔日、ぐでぐで軟体でいるうちに一日を棒に振った麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。振ってますか。つーか夏ってなんなの10月やぞ。


6月某日、以前、勘違いやらなんやらで結局行けなかったねじりまんぽへ、そのときご一緒した方とまた行ってみることにした。5年目の正直で行けるのか、ねじりまんぽ。(前回の顛末はこちら → 「大山崎 散歩 DE マンポ」

JR山崎駅で待ち合わせ、美術館の送迎バスを待つ。と、連れの方が妙なものに気づかれた。
「あれ、ハートじゃないですか」


「ハート……ですね」
「なんでしょう?」
「なんでしょうね?……『叶わせてみせようその想い ハートの町 大山崎』って書いてありますが」
「『叶わせてみせよう』って何様なんでしょうね」
「そうとう偉い感じの方ですね」

とかなんとかいってるうちに、バスが来た。こういうものに拘泥してバスに乗り遅れる、なんてわれわれにはいかにもありそうな話だが、ちゃんと乗車できた。

アサヒビール大山崎山荘美術館へのトンネルの手前で下車。


トンネルを抜けるといきなりウグイスの声が響いた。「これ……本物ですよね」と同行者様。わたしも一瞬効果音かと思った。異世界への門だな。坂をゆっくりと上る。緑も空気も澄んでいる。この時点ですでに命がよく洗われている気がする。住みたい。

現在開催中の展示はコレクション展。展示物は無論のこと、こちらは登録有形文化財である建物自体も展示物といった側面があるためか、建物内部は全面的に撮影禁止。加賀正太郎から山荘に命名してくれるよう依頼された夏目漱石が、14の案とその由来を記した手紙を送ったものの採用されず、「大山崎山荘」というド直球な名を加賀自身がつけたという経緯が書かれたパネル(漱石の手紙の全文が載っている)など、読むたびに笑ってしまって、これほんと撮りたいんだけど、ダメなんだよね。残念。

外部は撮影OK。ホシミスジがいた。


こちらはテラスから見た景色。


真下の青紅葉が見事。


宝寺(宝積寺)の塔がかろうじて見える。


やっぱり住みたいなあ。管理がたいへんだろうけど。

展示を見終え、アンティークオルゴールの演奏(今月の曲目は「ローエングリン」)を聴いて、バス乗り場へ……山荘の外観ぜんぜん撮ってなかったわ。はは。

トンネルの近くに漱石の句碑。


「宝寺の 隣に住んで 桜哉」
漱石の俳句はどれも、うまいんだかどうだかわからないけれど、味はある。

バスに乗り、阪急大山崎駅へ。行きしなにもらってきた地図によると、まんぽの最寄は阪急西山天王山駅らしいということで、一駅だけど電車に乗った。暑かったから。こういうときの無理は厳禁である。
去年の末頃に開業した西山天王山駅は思いのほか大きな駅で、なんと観光案内所もあった。ので道を尋ねる。係の方が二人がかりで教えてくれ、どうも頼りないと思われたのか、ひとりの方が「ご案内します」と途中まで導いてくださった。ありがたいありがたい。見るとたしかに我々だけでは西国街道にさえ行きつけなかった可能性があった。しかも、その方にお礼をいって別れたあと、「西国街道を道なりに行って、JRの線路を越えて」と教えられていたのに、右手に線路が見えたら即「あれじゃないですか」とかいって道を曲がろうとして、ちょうどその線路を阪急電車のマルーンの車体が通ったために「曲がってはいけない」と思い知るなど、そら頼りないわなと思いつつ街道に戻る。

黒い手が大きく書かれた看板。


ストップ!の意味なのだろうが、こういう手が迫ってくるようにも見えるなと思ったら怖くなってきた。形は明らかに人間の手なのに、どうも人間の手とは考えにくい大きさ、しかも黒いということを思えばさらに怖い。さっさと行きましょう。

ほどなくしてJRの線路をくぐる。このあとは「消防団の建物のところを入っていく」ということだったので、左右を注意しながら進んだが、一向に消防団の建物が見当たらない。「『線路過ぎたらすぐ』みたいなことゆうてはりましたよね」ということで、引き返す。消防団はないが、線路の手前の曲がれるところで曲がってみると


あった。やっと来られた。

説明文付き。


「円妙寺架道橋は、人がしゃがんでやっとの高さです」 高さは140㎝ほどか。前にストレートまんぽを通ったときも、なんでこんなに天井が低いのだろうと思ったのだけど、その説明はなかった。それどころか、マンポとはなにか、なんの説明もない。「そこで、マンポ(正確には鉄道の橋)を通ってこれまで通りに通れるようにしたというわけです」。正確にはマンポでなく鉄道の橋といわれても、そもそも「正確にマンポであるもの」がどんなものだかさっぱりわからないのだが、これは一般常識の範囲なのだろうか。わたしはものを知らないという自覚はあるけれども、知っててあたりまえなのでしょうか、マンポ。

さて、中へ。


うむ。


おー、ねじれてるねじれてる。

途中からコンクリート壁になっているのは、複線化したときに増設したからなんだろうかね。コンクリート壁側は平天井なので、こちらから見るとレンガ壁側のアーチ天井がよくわかる。


いったん反対側に抜ける。反対側の出入り口はこんな感じ。


もと来た方に戻る。


ちょっとSF感ある(SF観の安易さには目を瞑ってください)。

さて、入った時は興奮してあまりよく見ていなかった入り口辺りをゆっくり拝見。


暴威


うんこマン


などが訪れた模様。人気のスポットですね。

ようやっと念願のねじりまんぽを堪能した我々、もと来た道を駅に向かって歩く。

スキマに咲くセンニチコウ


などを鑑賞しつつ(楽しんでいたのはわたしだけかもしれないが)、てくてく歩く。

なんか……お怒りなんでしょうね。


駅に到着。まだ帰るには早い時間。観光案内所があるくらいだから、ほかにも見るべきものがけっこうあるのではないかという話になる。そういえば近くに公園がありましたよね、見ていきましょうか。

というわけで、駅近くの公園に来た。「調子馬ノ池公園」。一角に立派な馬の銅像がある。名前の由来がわかるかもと近づいてみた(写真は撮っていない)。台座に「一期一会」とあるだけで、なんだかよくわからない。馬と池の関係もわからないが、馬と一期一会の関係はさらにわからない。園内を少し歩いてみたけれどもやっぱりよくわからない。ベンチに座って少し休む。
なにげなく公園の隅に目をやると、水場の水をポリタンクに汲んでいる人がいる。ひょっとしてあれ、おいしい水なのでは。せっかくなので汲んで帰ろう。持参したペットボトルの水を無理やり飲み干し、水場が空くのを待つ。
汲んでいる人は車で来ていて、ポリタンクを二つ満たすとそれらを両手に車まで戻り、新たなタンクを持って来ては汲んでいる。業務用なのだろうか。だったら本当においしい水なんだろうな。
待っている間、京都はわりといろんなところに名水があって、汲めるようにしてあるところも多いんですよーなんて話していて、なぜか、というべきか当然というべきか、弘法大師の話に着地したあたりで水場が空いた。


500㎖のペットボトルに水を汲み、傍らの由来書きを読む。


なるほど……えっ


水道水なの? まあ、飲むには安心だけれども、ちょっと興ざめした感は否めない。
まあ、馬と池の関係は(諸説あるらしいが)わかった。一期一会との関係は皆目わからない。

このあとコッペパンの店など覗いて(外から中をうかがっただけ)、駅に戻る。駅の水飲み場にも「地下水100%の水道水」の表示があった。川や湖の水ではないというのがウリなんだなあ。考えてみればたしかに珍しいと思う(調べたら、日本の水道水の7割は地表水だった)。

同行者様と大山崎駅で別れ、JR山崎駅へ。電車が来るまで少し時間があったので、行きしなにはゆっくり見ていられなかった例のハートを見てみることにする。


退色が酷くて見づらいが、なるほど、そういう用途ね。


見ればちゃんとベンチが用意されている。しかし「ハートの町 大山崎」というわりに、ここ以外でハートを目にした覚えがない。町とハートの関係もよくわからず、あまり熱心にハートを推しているようにも思えないのだが、はて。(※後でわかったが、大山崎町がハート形をしているからということらしい。)

駅前のコンビニは デイリーヤマザキ であった。「ああ山崎駅だからねえ……いや関係ないやん」 山崎製パンが大山崎とは無関係だと気づくまでに少し時間がかかり、それが妙におかしくて、ひとりでちょっと笑ってしまった。ちょうど腹もすいてきたし、なにか買って帰ろう。「ロイヤルブレッドを使用したコロッケサンド」、うまそうだなー、これにするか、いや「どデカばくだんおにぎり(紅鮭明太昆布)」も捨てがたい……よしコロサンだ、と決めたそのとき、ちょうど入店してきたおじさんが一直線に弁当・サンドイッチ売場にやってきて、迷うことなくコロサンを手に取ってレジに行ってしまった。無念。しかたなく(でもないけど)どデカばくだんおにぎりを買い、これを晩飯とすることにした。コロサン食べたかったなあ。まあでも、いちにち楽しかったからいいか。


あ、いまさらだけど、本記事および過去記事のタイトル「散歩 DE まんぽ」は、むかしあった関西テレビ制作の番組「プライスバラエティー ナンボ DE なんぼ」(ちなみに見てはいなかった)からいただいた、ま、要はローカルなダジャレ……まあローカルでなくてもわたくしのダジャレはスルーされがちですね「奈良へ...」とかね。大丈夫です、泣いてません。

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