2020-08-11

【夢】北斎の妻

むかし働いていた百貨店に傘を買いに行く。催事場で小柄な年配の男性が、なにかイベントを行っていた。綿シャツに綿ニットのベスト、コーデュロイのパンツ姿のその男性が葛飾北斎であることはすぐにわかった。なにかわたしに渡すものがあると北斎はいう。あなたはお客さんだから知らないかもしれないが、あとでバックヤードの「熊野の人形台」のところに来てほしいといわれ、バックヤードはわかりますが、その「人形台」はどこにあるんでしょう、この階なんですか、それとも人形売場のある階なんでしょうか、そう訊ねたが北斎の返事は要領を得ない。介助の女性を伴い、北斎の妻が竹製の車椅子でやってくる。彼女は介助人に助けられて車椅子を下り、美術館の展示室にあるようなベンチに座る。ここでわたしは自分が何をしに来たのか思い出した。わたしは傘を買いに来たのだというと、北斎と催事のマネージャーにエスカレーターに乗るように促された。そうだった、傘の売り場はこの階ではなかった。下りのエスカレーターに乗る。長いエスカレーターの下っていく先の正面は壁になっており、その手前で横方向からの階段と交差している。ああ、これでは壁にぶつかってしまうと思ったら、わたしのいる位置から1ⅿほど先にある部分が壁に当たってめくれ上がったかと思うと、向きを変えてそのまま階段を下りていく。エスカレーターはよく見ると小さな竹のピースがつなぎ合わされたカーペット状になっていて、いつの間にかわたしはその後部にある座席に座っていた。それはぞわぞわと波うちながら階段を下り、障害物にぶち当たると向きを変え、また別の階段をずるずると上り、一向に止まる気配がない。かなりスピードが出ているし、なにかにぶつかると相当な衝撃が伝わってくるので、このまま乗っていて大丈夫なのか不安になってきた。ふと、これは北斎の妻が乗っていた竹製の車椅子なのだと思いあたる。しかしどこに向かっているのだろう、いつ止まるのだろう、下りることはできないのだろうかと焦るうちに、ベンチに座る北斎の妻と介助の女性が見えてきた。これはどうやって止めるのですかと尋ねると、介助の女性から、自動運転であと3時間ほど走るはずだと答えが返ってきた。竹の車椅子はベンチの横を走り抜ける。北斎の妻が複雑な笑みを浮かべている。

#夢

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