このところ、どうにも心がささくれ立っており、うるおいを渇望している麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。うるおってますか。しっとりぷるぷるですか。
12月某日、夏に購入した下呂温泉のおトクな3回券「湯めぐり手形」があと1回分残っていたので消化しに行ってきた。冬の温泉はよいね。うるおうね。
7時過ぎの電車で出発。めずらしく最初から座れ、そのあと4回乗り換えたが、ずっと座って行けた。そろそろ「京都から福井県まで立ちっぱなし」(実話)なんて状況には耐えられるかどうかというお年頃なので、たいそうラッキーであった。
美濃太田発 下呂行きの車両でわたしの向かいに座っていた若い男女が、もう、なんというか、心に浮かんだ言葉をそのままいうことはわたしの品性が許さないので控えるが、そのとなりに座っていた年配女性二人連れはあからさまに指をさしてヒソヒソいっており、問題の彼らを挟んで反対側に座っていた常識的な(あっ、内心「非常識」と思っていることがはしなくも表れてしまったが、先にいった「心に浮かんだ言葉」とは違うからいいや)カップルの男性はめっちゃ横目で彼らを見ていた。その様子を真正面から見るはめになったわたしは必死に笑いをこらえていたわけだが、ホントにもう、非常につらかった。このときの車内全員の心の声が聞こえたとしたら、それはそれは見事な「電車はおまえん家じゃねえんだよ!」の斉唱だったのではないかと思う。
というわけで、来ました。
家を出たときは気持ちよく晴れていたのだけど、途中から曇りだし、着いたら雪がちらついていた。この湯気のあったかそうなこと。
お天気は悪くても、こういう眺めはなかなかいい。
まずは昼めし。以前訪れた食堂で、前にも食べたけど、やっぱり川魚定食にした。
先客の二人連れの中国人女性が、猪鍋を「豚鍋ください」と注文して、「豚じゃなくて猪だけどいいか」とお店の人にきかれていた。日本語が流暢だったので留学生かと思うが、そういえば中国語で豚は「猪」、猪は「野猪」というのだった。「猪」という文字を見て、とっさに「豚」に変換してしまったのかも。
狭い歩道を挟んでタイマー撮影しているインスタ映えに行く手を阻まれつつも駅に戻り、観光案内所で各施設の営業時間を確認する。帰りの電車まで4時間弱。あまりはやく風呂に入って湯冷めしてもなんなので、なるべく遅い時間まで営業している施設を選びたい。ということで、午後3時まで利用できる小川屋さんに行ってみることにした。
とはいえ、何時間も風呂に入っていることなどできないわけで、時間つぶしを考えないといけない。で、そこがなんなのかはちっとも知らないが、合掌村とやらに行ってみようと思った。駅から徒歩約20分だし、ちょうどいいのではなかろうか。
そこまでの道は、ほぼずっと上り坂である。途中から晴れ間も出てきた。15分ばかり歩くと「近道」とかかれたゲートが見えたのでそれをくぐって行く。「近道」イコール「急勾配」だろうと思ったが、さほどでもない。脇の斜面にはカエデの葉が散り敷いていた。秋は綺麗なことだろう。
着いた。
これが入口。合掌家屋を移築して集落を再現した施設らしく、案内板を見てみたら、けっこう広大な感じで、見て回るほどの時間はなさそうだったので見学はやめた。入場料が必要だったからではない。ないといったらない。
駐車場を挟んで土産物店と喫茶店。なんとなく懐かしい感じ。こういう建物ってどこにでもある気がするけど、なにか特定の建築様式なのだろうか。「国道沿い様式」とか。
駐車場のかえる。さて、つかりに行くとするか。
合掌村から10分ほどで現場。
入口にかえる。
プランター脇にかえる。
玄関にかえる。
ロビーにかえる、とかえるだらけである。写真は撮っていないがほかにも味わい深いかえるたちがいた。
今回訪れたホテルでは、フロントに日帰り客の行列ができてて、これまで、といっても2回だけれども、ほぼ貸し切り状態だったので驚いたが、まあ今回は冬休み期間だからな。3階がフロントで(山の上だから)、そこからまず2階にエレベーターで降り、別のエレベーターに乗り換えて、大浴場のある地下1階に行くように指示されたので従ったけれども、階段で降りた方が面倒がないのではないか。エレベーターの中には椅子が一脚置いてあった。湯あたりした人用か。
大浴場へ。入ってみて度肝を抜かれた。畳敷きである。浴槽に足を浸けて寝ている人がいる。それはアリなのか。そのための畳なのか。どうなんだ。といささか困惑しつつ、まあ落ち着けと体を洗うことにするが、風呂椅子を畳に置いて座ることにそもそも抵抗があるのに、さらに湯をかぶったり、あまつさえ石鹸の泡を流したりって……3秒で慣れた。考えたら冬の風呂場のタイルの冷たさときたら心臓にダイレクトにくる感があるけど、畳のおかげでそのストレスがない。これはこれでアリではないか。とはいえご家庭では無理ですね、衛生面で。
浴槽は広々として気持ちよい。時折空が晴れるらしく、飛騨川に面した窓から射す日の光を浴びて湯につかっていると、ちょっとしたうしろめたさを感じてそれがまたよい。風呂なしアパートに住んでいたころの娯楽は、休みの日に開いたばかりの銭湯に行って、天窓から入る光を浴びつつほとんど人のいない浴槽につかることだった。もちろん湯上りはコーヒー牛乳一択。んなことはどうでもいい。
露天風呂に行ってみようと、ドアを開けたらそこは階段だった。露天風呂は階下にあった。全裸で階段を降りるこの感覚には覚えがある。その風呂なしアパートに住んでいたころ、いつも行く銭湯とは違うところに行ってみようと、徒歩10分くらいのところにある銭湯に行ってみたら、そこは3階建て。脱衣場が1階で、服を脱いだら浴場のある2階と3階までは階段かエレベーターでのぼるというエクストリームな銭湯。全裸で階段も相当だが、全裸エレベーターの落ち着かなさときたらハンパないのだ、なんでか知らんが。それはともかく、冬の露天は気持ちいい。体があったかく頭が涼しいのでいつまででも入っていられそう。あかんけど。
いや、いいお湯でした。湯から上がって服を着る。あっつあつなので、来た時よりも2枚分薄着になり、あっつあつのまま館内をうろつく。
卓球台。やはりこれがあるだけで盛り上がる。2台あり。エアホッケーも欲しいところだが、この部屋にはなかった。
卓球台の部屋の隣は図書室。
いいですね。火鉢もいい感じ。置いてある本は
ファラデー!チェーホフ!ホーソーン!フォークナー!ハーディ!テニスン!高校入試三科要点暗記!
「トゥワイス・トールド・テイルズ」の文庫なんてあったんだな。ていうか、これ薄すぎやしませんか。抄訳かな。その隣のフィッツジェラルド『夢淡き青春』なんて知らんぞ、"The Rich Boy"とかか、なんて思っていたら、The Great Gatsby の翻訳だと教えていただいた。しかし、なんちゅうタイトルだ。
ニチブンコーナー。『平家物語』の中・下巻はございません。
本の背表紙を楽しんだ後は、地下1階から3階まで階段で上り、ロビーで休み、土産物コーナーを見る。これといってほしいものはない。なんせ下呂3回目だから。しかしここの土産コーナーにいたこいつ。
なんだおまえは。飛騨牛て。
頃合いを見てホテルを出て、近くのコンビニで水を買おうとしたら、前に並んでいた中国人観光客の皆さんが、ものすごい量の酒と食べものを買っておられた。豪遊だな。羨ましい。
帰りに通りかかった噴泉池。
これは夏に撮ったものだけど、こういう河川敷の吹きさらしである。こんな雪のちらつく日に入る人など、と思ったら、おじさんが数人入っててびっくりした。足湯とかじゃなく、がっつり脱いで浸かってた。強い。(※当然ながら水着着用がルールです)
帰りの電車もすいていた。一瞬行きの電車に乗り合わせた〇〇〇〇〇(心の声は自主規制)いねえかなと期待(?)したがいなかったので、心安らかに帰路についた。
岐阜で下車して、駅の近くの大正庵さんへ。
味噌煮込みうどん。一味唐辛子を大量に振り込んでいただいた。美味し。箸袋に「釜揚げうどん」と書いてあるほどで、ここの名物は釜揚げうどんなのだろうけど、けっこうなみぞれが降っていて寒かったので。隣席のご夫婦らしき年配の男女は、そろってカレーうどんとごぼう天を召し上がっていたが、それもすごく美味しそうだったな。次に行くときは釜揚げを食べたい。
午後10時過ぎ、無事帰宅。温泉はいいね。今回畳風呂にびっくりしたけど、施設ごとの特色を味わうのもいいものだと思った。湯めぐり手形は3回使えて1,300円とかなりお得だし、また行ってもいいな。ただし、
この木製のごっついのがたまっていくことを考えると、多少ひるんでしまうのも事実なのである。
今年は自分は伊勢の夫婦岩付近で大量のカエルを見ましたが、下呂温泉にもこんなにバリエーション豊かなカエルたちがいるとは・・・。
返信削除川魚が美味しそうですね。謎の飛騨牛も気にかかる・・・。
自分は常々大阪難波で無数の外国人の皆様にまみれて歩いておりますが、昨今は岐阜の内陸にまで観光客がいるのですね。
今年も楽しく記事を読ませて頂きました。
来年もよろしくお願い致します。
れぽれろさん、コメントありがとうございます。
削除下呂温泉には「かえる神社」なるものまでありました。町のそこここにかえるがいます。「下呂」の音ががかえるの鳴き声に似ているからではないかと思うのですが、真相は知りません(笑)。
夏には高山まで行きましたが、そこにも外国人観光客がいっぱいでした。驚いたのは、吉備津。駅から吉備津神社まで歩いたのですが、まわりでは日本語が聞こえませんでした。「観光地」って感じではまったくないんですけどねー。日本を楽しんでくれたらうれしいですね。
お読みいただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。