2015-03-22

宮島まで――春の弾丸旅行記(前)

たて込んだ仕事を死ぬ気で片づけ、晴れ晴れとした気持ちで出かけることができると思った矢先に、1件新たにとりかからねばならない事案が発生し、一点の曇りある心境で旅に出ることになった麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。曇ってませんか。


さて、ややもするとぐだぐだ理由をつけては問題を先送りする傾向のあるわたしが、なんとしても早めに終える気になるようにと、目の前にぶら下げるエサとして企画したのが今回の旅である。行き先は安芸の宮島。どうせなら泊まりで行きたいものだけど、連休は無理なので、京都から日帰りなのである。なんと無謀な、とお思いになったかもしれない。そう、以前からわたしをご存知の方なら、そんなことが可能なのか、と思われてもいたしかたありますまい。

が! ご安心ください。今回のわたしはひと味ちがいます。いつもの「18きっぷで行けるとこまで行ってやれ」の旅ではないのです。なんと新幹線に乗るのです!……まあ、お得な「駅長おすすめ駅プラン」ってやつだけど。駅プランなので、新幹線には京都駅から乗れないのだけど。あーだこーだいってるけど、手配はみんな旅の友にお任せしたので小声だけど。


新幹線には乗れないが、関空特急「はるか」には乗れる。というわけで、京都-新大阪間は意地でも「はるか」(途中停車なし)に乗ってやることにした。しかし、新快速を利用しても高槻に停車するだけなので時間的にたいして差はなく、しかも新快速利用の場合よりウチを早く出る必要があり、さらに新大阪駅で待ち時間が発生するという、どう考えてもメリットがあるとは一切思えない状況なのだが、これもまた旅の醍醐味。(なのか?)


旅の当日。5時起床。寒い。そして暗い。よく考えたらここまで早く起きる必要はなかった。 新大阪の待ち時間で朝食をとる予定なのだから。とはいえ寝なおすほどの時間もない。寒いので、湯を沸かして白湯を飲み、少し本を読むうちに、明るくなってきた。

6時半に家を出る。早朝は電車の本数が少ないので、乗ってしまえば5分で着く待ち合わせ場所なのに、30分前にウチを出て、時間まで待っていないといけない。寒いのでコンビニに入って時間をつぶし、旅の友の到着を待つ。待ち合わせ時刻の少し前に友登場。自分の電車の時間に合わせて待ち合わせ時刻を設定したのではないかという疑惑がふと頭をよぎったのだが、考えるのはよして、ちょうど来た電車に乗車、京都駅から特急「はるか」に乗り換え、新大阪へ。動き出した「はるか」は、さすが特急……いや、えらいノロノロ運転なんだけど。普通電車に抜かれてるんですけど。歩いたほうが速いのではないか。いやさすがにそれはないけど、ひょっとしたらウサイン・ボルトの全速力には負けるのではないか、と思われるほどの速度でしばらく走行、向日市あたりから快調に走り出したが、なんだったんだろう。


新大阪着。ここで降りる人はまずいない(京都発の関空特急なんだから当たり前だ)。空き時間で立ち食いそば屋に入り、揚げ玉そばで朝食。あたたかい。


あたたまったところで新幹線ホームへ。柱にはこんなささやかな広告が。


……効果のほどがよくわからない。これを見て、「あ、アルトバイエルン買わなきゃ」 と思ったところでここは新幹線ホーム。友いわく「キオスクで売ってんじゃないの」 しかしキオスクで買ってどうするのか。べつに大阪名物ではないので土産ではありえないし、旅のおとものビールのアテに、アルトバイエルンを生でかじるワイルドな人もいまい。出かける人はいうまでもなく、到着した人も、これから用事があるというのに、ソーセージ買ってる場合ではなかろう。あとは帰宅するだけの人なら、なおさらキオスクで買う意味が不明である。念のためすぐそばのキオスクを覗いてみた。案の定売ってはいなかった。


そうこうするうちに、我々の乗るべき電車がホームに入ってきたので、アルトバイエルン問題は棚上げにして、乗車。走り出すと同時に連れは爆睡したのだが、久しぶりの旅で興奮しているのかなんなのかよくはわからないが、眠れない上に話し相手もいないわたしは、電光掲示板を延々見つづけていた。これがまた、「ハードロックナット」を製造している「ハードロック工業」など、かなり気になる企業名が出てきたりするので、目が離せない。


……まあ写真はちゃんと写せると思ってはいなかったけどな。
(あとで調べたら、"Hard Rock"ではなく"Hardlock"だった。がっちり留まるんでしょうね)


新神戸で乗ってきた家族連れが、われわれのすぐ後ろの席の人に「そこ、ぼくらの席なんですけど」と話しかけている。後ろの人、あわてて乗車券を出して「〇時発のひかり☆号で、△号車の……あれ、ひかり☆号?」 話しかけた人も乗車券をじっくり見て、「あれ、△号車?」  後ろの人「え? 乗り間違えた?」 家族連れ「すみませんでした。車両が違ったみたいです」……なんかわからんが、どちらもなんか間違えたらしい。というちょっとした大事件が起こっていたことを、寝ていた連れは知らない。


姫路が近づいてきた。姫路といえば、アレだ、「白すぎ城」、もとい「白鷺城」だ。この前あんなにも白いと知らずにうかうかして写真を撮りそこなった姫路城。(もしもご興味がおありの方がいらしたならば、こちらをどうぞ→「岡山行き当たりばったり1――日生~伊部」) 今回はいけるのか?

動いている車内からしか狙えないことがわかっているので気が抜けない。緊張しつつカメラを準備。

見えた!


と思ったら障害物のかげに。 次!


またしても。次!


周りも白いので、目立たないことこの上ない。


ということで、いちばんまともなのがコレなんだけど、なにやら奇跡を感じる1枚となった。


白い。(もっとマシな感想はないのか)

過ぎてみれば、なんでここまで執念を燃やしたのか我ながら意味がわからないのだが、これもまた旅の醍醐味。(なのか?)


姫路を過ぎたら、あとはとくに面白いものもなかったが(まあ姫路城だって面白がっているのはわたしだけかもしれないけど)、どのあたりからだろうか、民家の屋根瓦の色が、ほとんどオレンジというか明るい茶色になるのが興味深い。中国地方だけなんだろうかね。なんとなく異国情緒? ってやつ? を感じるなどして旅気分を盛り上げているうちに、広島着。ここからは在来線に乗り換えて、宮島口へは30分ほど。ここで降りる人の目的地はほとんど同じなので、駅前からすぐのフェリー乗り場へ団体客のように移動する。わーわー喋っているのはたいてい関西アクセントのような気がする。多いな、関西人。


フェ リー乗り場で乗船待ちしていると、ガラガラガラと大きな音がする。見ると、船の上からホイールローダーが海中に石を投入している。二台のホイールローダーが交替で動いているのだけど、砕石を満載した 船上で、美しさを感じさせるほどに効率的に入れ替わっている様子が面白く、飽きずに見ていて連れに呆れられた。 ずーーっと見ていたのは、たぶん前に並んでいた外国人一家の子供とわたしだけだったのではないかと思われるのだが、気にしたら負けだ(なんの勝負だ)。


フェリー乗船。上の階が見晴らしがよいだろうから、と階段を登ると、卒業旅行の学生さんたちだろうかね、あっちでもこっちでも、例の自撮り棒で大自撮り大会の様相を呈しておる。これ、ものすごく面白い絵面だったんだけど、写真はさすがにね。ダメでしょう。


フェリーが動き出してから、前のほうの柵ぎりぎりのところに移動。


寒い日ではあったけど、天気もよくて風が心地よい。遠くのほうに厳島神社の大鳥居が見えてきた。いいね、人もあんまりいないし、と思っていたらあっという間に自撮り集団に取り囲まれたので、退散。


そうこうしているうちに、宮島着。


(続く)

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